気仙のハード復興事業 完遂 震災発生から13年で 最後の普金地区(赤崎町)が終了
令和6年3月17日付 1面

県が東日本大震災からの復興事業として大船渡市赤崎町で進めてきた普金地区の海岸保全施設(防潮堤など)整備がこのほど終了し、国、県、気仙両市が進めてきたハード面での復旧・復興事業は震災発生から13年で完遂した。この間、被災した漁港や防潮堤、農地、公共施設などが復旧し、災害公営住宅、内陸部との安全な交通を確保するための道路も誕生した。今後は引き続き、被災者の心のケアや災害時の避難行動、コミュニティーの形成といったソフト面での復興事業の充実、推進が求められる。(三浦佳恵)
普金地区の海岸保全施設整備は、平成27年度にスタート。市道野々田川口橋線から県道大船渡綾里三陸線の綾里方面にかけ、防潮堤や陸こうといった総延長586㍍の海岸保全施設が整備された。
防潮堤は延長440㍍、高さT・P(東京湾平均海面)7・5㍍。ほかに、カウンターゲートタイプの水門1基(高さ4・2㍍、幅4・8㍍)、自動閉鎖システムを備えた陸こう3基(幅10~22㍍、高さ3・6~5・84㍍、全て横引きゲート)、乗り越し道路1カ所を建設した。
当初は28年度の完成を目指していたが、地盤や資材調達などの関係により、気仙でのハード復興事業としては唯一、令和5年度に延びた。同年度は6月に陸こうの扉体3基が設置され、8月には防潮堤の躯体が完成。工事終了を前に、津波防護機能を発揮できる状態となった。
12月中旬には、津波注意報・警報が発令されると遠隔操作で陸こうのゲートが閉まる「陸こう自動閉鎖システム」の運用を開始。工事はその後、県道の切り替えなどが進められ、今年2月19日までに完了。今月12日に整備区域内の市道を市に引き渡し、予定通りに事業を終えた。
県は4年度分まで、被災した防潮堤や道路など、社会資本の復旧・復興状況を「社会資本の復旧・復興ロードマップ」として定期的に公表してきた。
これによると、気仙で国、県、大船渡、陸前高田各市が取り組んできたハード面での復興事業は219事業(国5事業、県90事業、大船渡市70事業、陸前高田市54事業)。国の事業は平成30年度、気仙両市は令和3年度で完了した。
県は、大船渡市で52事業、陸前高田市で33事業、住田町で5事業を展開。分野別では、海岸保全施設36事業、復興まちづくり12事業、復興道路等9事業、災害公営住宅15事業、漁港9事業、港湾6事業、医療(県立高田病院)、教育(県立高田高校)、公園(高田松原津波復興祈念公園)の各1事業を手がけた。
各事業は計画を策定し、地域住民らの合意形成を図りながら実施。資材不足や天候不良、地盤等の影響を受けた現場もあったが、全国から派遣された応援職員らの協力も受けながら整備が進められた。
施設の機能には、震災での教訓を踏まえた新たな工夫、システムも導入。水門・陸こうの自動閉鎖システムをはじめ、防潮堤には破壊、倒壊までの時間を少しでも長くし、全壊による危険性を低減させる構造を採用。復興道路、復興支援道路は、内陸部とのアクセスを向上させ、医療、観光・産業振興などにも貢献している。
ハード面の復興事業は一区切りを迎えたが、被災者の心のケアをはじめとしたソフト面はいまだ途上にある。さらに、完成したインフラ施設の安全性を維持し、津波注意報・警報発令時の速やかな高台への避難、水門・陸こう自動閉鎖システムなどの機能を住民らに周知、浸透させる取り組みも必要となる。
県沿岸広域振興局の髙橋正博副局長は、地域住民や地権者、関係者らの理解と協力に感謝し、「今後は完成したインフラの安全・安心を確保していくとともに、有効に活用して津波伝承や交流人口の拡大、なりわいの再生、医療の充実など、気仙の活性化につなげていきたい」と力を込め、「改めて、津波注意報・警報発令時には早めに高台へ避難するようお願いしたい」と話している。