県内最大規模のハウスに 越喜来でトマト大規模栽培施設着工 被災跡地生かし来年3月完成へ
令和6年3月20日付 7面

大船渡市三陸町越喜来沖田地内で19日、㈱いわて銀河農園(橋本幸之輔代表取締役、末崎町)によるトマト生産に向けた温室設備設置工事の安全祈願祭が執り行われた。末崎町に続く整備で、温室でのトマト栽培施設では県内最大規模。関係者は安全施工とともに、被災跡地を生かしたさらなる産業振興に期待を込めた。来年3月完成、4月生産開始、6月からの出荷を目指す。新規雇用は80~100人を見込む。(佐藤 壮)

旧越喜来小跡地などでハウス整備が本格化する
安全祈願祭は同社と施工業者の渡辺パイプ㈱=本社・東京都=が主催し、両社や市、県の関係者ら約20人が出席。くわ入れや玉串奉てんなどに続き、橋本代表取締役が「末崎でトマト栽培を開始し、順調に来ているのも、みなさんのおかげ。新しいチャレンジをして、全国に名前を響かせられるよう努力したい」とあいさつした。
整備場所は三陸鉄道三陸駅東側の沿岸部で、東日本大震災の浸水域。かつて越喜来小学校や住宅地、農地だった一帯で、市が産業用地として整備した4・8㌶を貸し付ける。
総事業費は22億円。このうち、産地生産基盤パワーアップ事業として、市から11億円の補助を受ける見込み。同事業は国の施策の一環で、県を通じて財源を確保した。被災跡地で展開するトマト大規模周年栽培を支援し、高性能な機械や設備導入などを支援しながら収益向上を後押しする。
施設面積は2・7㌶で、このうち栽培面積は2・5㌶と、県内最大規模を誇る。鉄骨ハウスを整備し、日射が少ない時期でも光を確保するLEDによる補光設備など、最新技術も取り入れる。
いわて銀河農園は、平成29年に市と企業立地協定を締結。震災で被災した末崎町小河原地区(大田地内)の被災跡地に約1・5㌶の農場を含む生産技術高度化施設を整備し、令和元年から出荷が本格化した。
トマトは主に、首都圏のスーパーマーケットに出荷。越喜来への新たな進出により、通年出荷確立など安定的な体制につながるほか、東北でも有数のトマト生産地となる。
新たな整備に伴う80~100人の新規雇用は、幅広い世代の採用を見込む。
橋本代表取締役は「末崎の事業が軌道に乗った。まとまった用地があり、雪が降らず冬場が温暖で、気候面の優位性を感じている。地域に価値ある産業としての農業をやりたい。跡地利用や雇用など地域課題を解決するための役に立てられれば」と話す。