ドクターカー」試験運行へ 大船渡市と住田町で 県立大船渡病院が4月16日から 速やかな治療と地域医療の充実図る

▲ 来月のドクターカー導入に向けて最終確認を行った(左から)神田町長、中野院長、横沢救命救急センター長、渕上市長

 大船渡市の県立大船渡病院(中野達也院長)は4月16日(火)から、救命救急を目的とした「ドクターカー」を大船渡地区消防組合管内の同市と住田町で試験運行する。消防の要請を受けて医師や看護師らを乗せたドクターカーを派遣し、合流した救急車内で治療を行う仕組みで、県内では初の試み。病院で行う処置を早め、検査や手術の必要性を事前に判断できるなどのメリットがある。今月18日夜には同院で導入に向けた会議が開かれ、関係者らが最終確認を行い、患者の速やかな治療と地域医療の充実に期待を込めた。(三浦佳恵)

 

救命救急目的では県内初

 

 ドクターカーは、緊急度、重症度の高い患者を病院外で診療するため、必要な医療機器や医薬品などを積み、医師が搭乗する緊急自動車。医療介入や決定的治療までの時間が短縮されるほか、救急隊では不可能な医療の提供、脳卒中などにおける治療方針決定の前倒しなどが可能となる。
 同院では令和5年度、救命救急センター専従の救急医が2人体制となった。これを受け、かねて構想があったドクターカーの導入を検討。院内や関係機関と調整を重ねてきた。
 導入に当たっては、患者搬送を行わず、医師、看護師、治療に必要な医療機器と医薬品を現場に派遣する「ラピッド・ドクターカー方針」を採用。車両は、資機材などが積み込める同院の災害用緊急車両・DMATカーを活用する。
 出動は、同センターと大船渡消防本部が症例などを要請基準として定め、それに合致する状況の場合に消防指令センターが要請。住民からの直接要請は対象外となる。
 ドクターカーには、救命救急センターの医師と看護師、運転手の3人が乗り込み、救急現場、または対象地域の計55カ所に設けた「ドッキングポイント」で救急車と合流。救急車内で診療をしながら病院へ向かう。こうした診療には医療費負担が発生するが、全て保険診療の範囲内となる。
 当面の間、出動日は毎週火・木・金曜日。午前9時~午後5時の要請に応じる。運行時は救急車と同様、サイレンを鳴らして緊急走行する。
 18日の会議には、中野院長や同院救命救急センターの横沢友樹センター長、大船渡市の渕上清市長、住田町の神田謙一町長、大船渡地区消防組合の関係者ら約20人が出席。横沢センター長がドクターカー運行に向けた説明を行い、救命率の向上はもちろん、人口減少下における医療提供体制の向上、若手医師の確保といった2次的な効果にも期待を寄せた。
 渕上市長は「本格運用に向け、市としても積極的に支援をしていきたい。住民の命を守るために、同じベクトルを向いて住田町とも連携をして支えていく」と、神田町長は「大船渡市と連携し、県の協力も受けながら取り組みたい。3者で情報交換をしながら進められれば」と述べ、運用に向けて積極的な協力姿勢を見せた。
 中野院長は「ドクターカーは全国の救急医療現場では少なからずあるが、県内では初めて。導入により、気仙地域の救急医療の向上に期待をするとともに、将来的には陸前高田市、釜石市にも範囲を広げたい。運用がより良い形でできるよう、バージョンアップをしていきたい」と話している。