「次の役員」どう確保 気仙両市の災害公営住宅関係者が陸前高田で交流会 負担軽減と安定運営の両立探る

▲ 災害公営住宅の安定的な自治会運営を見据えて議論

 東日本大震災の住宅再建策で、各地に整備された災害公営住宅。入居開始から6年以上が経過し、自治会組織などの役員をスムーズに引き継ぐ体制づくりへの関心が高まっている。23日には、陸前高田市気仙町の今泉団地で勉強・交流会が開催され、自治会や支援団体の関係者らが意見を交わした。役員を担う住民の負担軽減と、安定的な運営をどう両立するか──。自治会内で解決を目指すだけでなく、他団地や支援団体からの情報を取り入れて対応を固めるといった重要性が浮かび上がる。(佐藤 壮)


 この勉強・交流会は、県被災地コミュニティ支援コーディネート事業として実施。仮設住宅団地の時から気仙で被災者支援に当たるコーディネーターの船戸義和さん(45)が中心となって運営している。
 昨年12月以来の開催。大船渡市大船渡町の赤沢アパート(23戸)、同市盛町の下舘下アパート(58戸)、陸前高田市気仙町の今泉団地(61戸)の役員に加え、災害公営住宅のコミュニティサポートを担う特定非営利活動法人きょうせい大船渡や陸前高田まちづくり協働センターの各関係者ら約20人が出席した。
 船戸さんは「役員をずっとやっている人が多い中、対応策の一つに『輪番制』が話題に出る。現実的な選択肢となるのか、考える機会にしてもらえれば」とあいさつ。
 引き続き、いずれも入居以来役員を担っている赤沢アパートの佐々木昌夫さん(63)、下舘下アパート自治会(地域公民館)の山口茂さん(75)、今泉団地自治会の佐藤章さん(82)がそれぞれ現状を説明し、輪番制の可能性を探った。
 各団地の紹介では「将来のことを考えると誰でも役員の仕事ができるようにした方が良い」「各階(班)からの選出が機能しているので輪番制の予定はない。軸として長期間役員を担う人がいないと難しい」「つながりのない人は役員を引き受けない。若い世代は『決まり』と言われれば引き受ける」「団地内での活動を活発化しようと女性部を立ち上げた。役員は輪番制を考えている」といった実情が示された。
 一方、意見交換では「役員は輪番制で何とかなるかもしれないが、会長は違う。会長を担う人の確保が課題」と指摘する出席者も。役員を辞退できる年齢などのルールづくりや、制度改正に関しては、外部組織からサポートを受けながら見直す必要性が浮かび上がった。
 輪番制では、単純に順番で役員を決める方式だけでなく、一部の人は長期間担い、継続性を確保しているといった事例の紹介も。「エレベーター方式」として、総務部長や副会長、会長と段階的に役職を担う人材育成も話題に上った。
 また、現役員の業務量が多く、負担軽減の必要性も話題に。自治会を支える人材発掘に関しては、個人情報保護の観点から、役員であっても団地に住む人々の実情を把握する難しさなどでも意見が交わされた。
 入居当時から今泉団地自治会の会長を務める佐藤さんは「今は何とかなっているが、後々を考えれば育てていかなければならないと思っている。団地ごとに事情は違うが、話を聞けば参考になる」と話していた。
 気仙両市における災害公営住宅は、大船渡市内で25団地801戸(市営・県営)、陸前高田市内で11団地895戸(同)が整備された。平成29年度までに全て完成し、近年は、被災者以外の入居利用も進む。団地内の高齢化に伴う見守り体制の強化や周辺地域とのコミュニティー形成をはじめ課題は多く、人材育成や行政・支援団体との連携強化などが求められている。
 船戸さんは「日頃から課題を真剣に話し合い、整理する機会は必要。役員が疲れてしまい、自治会が崩壊しているケースも出ている。今は大丈夫でも、少しずつ動き始めていくことが大切」と語る。