感謝の思い胸に退任へ 高田松原を守る会理事長の鈴木善久さん

▲ この春で理事長を退任する予定の鈴木さん

 陸前高田市のNPO法人高田松原を守る会(会員66人)の理事会は25日、市内で開かれ、4月からの役員体制について方針を固めた。前身の任意団体の会長を経て平成27年から同法人理事長を務めてきた鈴木善久さん(79)=米崎町=は退任し、今後は顧問として活動を見守っていく予定。鈴木さんは各種事業に関わってきた関係者に感謝を表し、「高田松原を守り育てる人の輪がこれからも広がり続けてほしい」と願う。(阿部仁志)

 

 鈴木さんは高田町出身。岩手大学卒業後、理科教諭として市内外の中学校に勤務する傍ら、陸前高田市立博物館の専門研究員となって植物観察会の講師も務めた。
 定年退職後の平成18年からは、市民団体の高田松原を守る会の一員として、地域住民や関係機関と連携、協力しながら国の名勝・高田松原を守り育てる活動を展開。松原の清掃、松くい虫被害防除をはじめ、江戸時代からの歴史伝承にも力を入れた。
 23年の東日本大震災では、約7万本あったとされる松原のマツや砂浜が大津波で流失し、守る会も、当時の吉田正耕会長ら会員9人が犠牲となった。会の存続が危ぶまれた中、残った会員らが白砂青松再生に向けて立ち上がり、鈴木さんが新会長となってかじを取った。
 松ぼっくりから種子を採取した高田松原由来の実生苗の育成を成功させ、松原への植樹準備を進める中で、守る会を法人化。県や市と連携し、全国の企業、団体、ボランティアと協力して29年6月から植樹をスタートさせ、令和3年5月までに、県や市から認可を受けた約1万本の苗の植樹を完了させた。
 これらの取り組みが評価され、守る会は4年に第47回東海社会文化賞(東海社会文化事業基金主催)を受賞。鈴木さんは、長年の緑化活動への功績が認められ、公益社団法人国土緑化推進機構の4年度緑化功労者・農林水産大臣賞を受賞した。
 柔らかな物腰で幅広い世代に親しまれ、高田松原の再生に心血を注いで会長、理事長の役割を果たしてきた鈴木さん。
 退任を決めた理由について、鈴木さんは「マツの植樹から育成へとステージが変わり、次の人に役を譲るタイミングがきた」と語る。自身の体調など総合的に判断し、理事会で意思を伝えた。
 6年度は千田勝治副理事長が新理事長に就く見通し。鈴木さんの顧問就任を含め、6月に行う総会で承認されれば最終決定となる。
 鈴木さんは「松原再生に関わった多くの人のご縁と、ここまで自分を支えてくれた守る会のメンバーに感謝している。マツがしっかりと成長するよう、これからも見守りたい。新体制となる守る会には、これまでの活動や思いを若い世代に引き継いでいってもらいたい」と思いを寄せる。