■能登地震被災地支援/復興への知見や課題共有 気仙からの派遣者 現地の状況や活動伝える
令和6年4月4日付 7面

石川県内に甚大な被害をもたらした能登半島地震の発生から3カ月が経過した中、気仙の自治体などから被災者の生活再建をはじめとする復旧・復興支援のため、職員らが現地に派遣されている。13年前に起きた東日本大震災の復興支援に対する恩返しの思いも胸に、被災地で活動している。(佐藤 壮、高橋 信)
公費解体などの現状を報告/大船渡市職員

地震で被害を受けた建物(遠藤主任撮影)
石川県能登町に派遣された大船渡市職員の活動報告会が1日、同市役所で行われた。公費解体の申請や住家の罹災証明に関する業務などを通じて見聞きした、発災3カ月目の状況を渕上清市長らに伝えた。
3月22~29日に活動した都市整備部建設課の遠藤公太主任(35)と、同18~25日に出向いた総務部契約検査室の村上奨記主事(26)が、渕上市長や引屋敷努副市長らに報告。主に、遠藤主任は公費解体申請に、村上主事は罹災証明に関する業務にあたった。
遠藤主任は、公費解体で能登町役場に訪れた被災者のうち、実際に申請まで行き着くのは半分未満にとどまっていた現状を報告。被災した建物の登記手続きが進んでいない事例や、住宅と住宅の間隔がなく、隣接する家主にも許可を得なければならない状況などを示した。さらに、敷地内に住宅と蔵、納屋などが密集し、住宅は大丈夫でも蔵は大きな被害を受けたといったケースの難しさにも言及した。
村上主事は、罹災証明業務に関し、他県からの派遣職員が長期間にわたり従事し、慣れない地名などに苦戦する中で「住宅地図がぼろぼろになっていた」などと明かした。受け入れる自治体職員が派遣職員を割り振りする業務負担にも触れ、事前にある程度決めておくなどの教訓も伝えた。また、同町では、住民が東日本大震災の映像を見ていたことで、津波避難が徹底されていたことも紹介した。
渕上市長は、2人の業務をねぎらいながら「被災地の復旧は緒に就いたところではあるが、たゆまぬ歩みは復興につながっている。市としても、できる限りの支援を続けたい」と話した。
ボラセンの運営支援に奔走/陸前高田市社協職員

志賀町での活動を振り返る松本さん
陸前高田市社会福祉協議会の地域福祉部門主任・松本崇史さん(43)は3月、能登半島地震で被災した石川県志賀町で、災害ボランティアセンターの運営支援に取り組んだ。市社協は東日本大震災後、石川県を含む北陸から支援を受けた経緯があり、松本さんは「13年前の恩返しを」との思いで、現地で1週間活動した。今月17日(水)に再び志賀町を訪ね、支援に当たる。
支援は、県社会福祉協議会による地震被災地への職員派遣の一環。本県を含む北海道・東北ブロックは志賀町に対し、1週間交代で職員を送り込んでいる。
松本さんは3月12~18日、志賀町社協の災害ボランティアセンターで活動。被災者とボランティアをつなぐコーディネートなどに従事した。
石川県まとめの被害報告によると、同町の全半壊住家は2298棟(2日現在)。倒壊したまま手つかずの住家は今も多くあり、被災者は壊れた家財や塀の撤去・運搬などで、ボランティアのマンパワーを求めているという。
「断水している地域もあり、3カ月がたった今も過酷な状況」と松本さん。「被災した人の力になりたい。疲れがたまっている志賀町社協職員の負担軽減にもつなげたい」と語る。
陸前高田市社協によると、東日本大震災時に同市で運営業務などに携わった支援者は、平成23年3月から24年12月までに延べ9589人。石川県内の社協からは23年4~9月に延べ390人が活動に協力した。
松本さんは17日から23日(火)まで、再び志賀町で活動する。「北陸からは13年前に支援をいただき、今回の地震で甚大な被害を受けた珠洲市、輪島市の社協職員などとも当時名刺を交わした記憶が残っている。恩返しのためにも少しでも協力したい」と話す。