■新型コロナウイルス/4年余りの取り組み振り返る 対人口10万人患者数は全国最少 次なる感染症危機への備えに 県

 県はこのほど、新型コロナウイルス感染症対応の振り返りを行い、その概要を公表した。国内で初の患者が確認されてから4年余りが経過した中、県は感染患者の療養や予防、感染拡大防止、生活支援、経済対策などの各種取り組みを展開してきた。公表内容によると、県内の新規患者数は同年5月7日時点で累計23万7794人、人口10万人当たりの新規患者数は全国最少の2万135人。県は振り返り内容を、次なる感染症危機への備えにするとしている。(三浦佳恵)


 新型ウイルスは令和元年12月、中国湖北省武漢市で発生。2年1月には、日本で最初の感染患者が確認された。
 政府は同2月、医療機関などが全感染者を届け出ねばならない「2類感染症」に指定。感染者の全数把握や専用病床の確保など、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく対策を行ってきた。
 県は同月、達増拓也知事を本部長とする対策本部を設置。気仙でも県や3市町、関係機関で構成する大船渡地方支部会議が設けられた。
 全国や県内の感染状況、政府の動向などを見ながら随時、本部員会議などを開催。2度にわたる県独自の宣言発出、基本的な感染対策の呼びかけを行ったほか、全県的な医療提供体制を確保するなど、県民の命と健康を守る取り組みを進めてきた。
 対策本部、同支部会議は、新型ウイルスが昨年5月で5類に移行したことを受けて廃止。県はこれまでの取り組み内容について、評価と課題を整理し、次なる感染症危機への備えにしようと振り返りを行った。
 振り返りは、①はじめに②これまでの取組等の経緯③県対策本部運営・感染防止対策の要請等④公衆衛生・保健医療体制⑤第三者認証制度を含めた経済対策等⑥職員体制・関連予算──の全6章で構成。①では県内の新規患者数や死者数など(別表参照)を全国と比較しながら提示し、②では経緯を当時の感染状況とともに年表形式で整理した。
 ③以降は、感染拡大防止対策等の呼びかけ・要請、入院や外来医療、自宅療養者への医療提供体制、検査、ワクチン接種、いわて飲食店安心認証制度、経済対策・事業者支援などについて、取り組み内容と評価、課題、方向性をまとめた。
 このうち、「県内における感染拡大防止に向けた本県独自の宣言『岩手警戒宣言』および『岩手緊急事態宣言』の発出」は、3年7~9月と4年1~6月の2回実施。振り返りでは、「強い表現で危機的状況を周知し、多くの県民から感染対策等への理解と協力が得られ、爆発的な感染拡大の抑制に効果があった」と評価した。一方、課題には「宣言の長期化などによる効果の減衰を防ぐための効果的な情報発信」を挙げた。
 入院医療に関しては、県内で最大460床の患者受け入れ病床を確保したが、医療機関での人員不足などで入院受け入れが困難になった経緯に言及。「確保病床を最大限活用できるよう、医療人材の派遣体制を構築する必要がある」とし、今後の方向性には「平時から関係機関において新興感染症への対応を協議し、必要な医療提供体制を構築する」を掲げた。
 経済対策・事業者支援は、商工事業者、農林漁業者、生活困窮者、子育て世帯などを対象に講じた。県が5年度までに措置した新型ウイルス対策予算は4844億円。評価と課題では、支援策への一定の効果を挙げたうえで、県産農林水産物の高付加価値化に取り組む必要などを示した。
 振り返り内容は、県ホームページで公表している。