鳥獣被害増加に歯止めを 対策実施隊 氷上山で一斉捕獲活動(別写真あり)
令和6年4月9日付 3面

高田猟友会高田支部の会員でつくる陸前高田市鳥獣被害対策実施隊(細谷忠弘隊長)は7日、同市高田町と竹駒町にまたがる氷上山で大規模なニホンジカの一斉捕獲を行った。近年はイノシシの目撃情報も気仙地域で相次いでおり、隊員は農作物や人の被害増加を防ぐため、一層の警戒心を強め活動にあたった。(齊藤 拓)
同隊は平成25年に、国の「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」に基づいて発足。野生動物を適正頭数で維持するための活動を行っている。
気仙地域の獣害は、主にニホンジカによって引き起こされる。市の農作物被害調査によると、被害額は隊発足前の24年度が約1114万円だったのに対し、令和4年度は約146万円と減少。一方で被害の届け出を行っていない農家も多く、表面化していない被害や課題への対策が必要とされる。
さらに県内では、イノシシが平成23年に一関市で捕獲されて以降、生息域の広がりを見せている。気仙では、29年に陸前高田市横田町で初めてイノシシによる農業被害が報告された。令和5年度の捕獲実績は16頭と、4年度の2頭から急増。農作物の食害や人身被害のほか、豚熱(CSF)を養豚場に持ち込む恐れもあり、実態の把握と頭数の増加防止が急がれている。
獣害防止と頭数増加に歯止めをかけるため、市の委嘱を受け活動する同隊は、近年休止していた大規模なニホンジカの捕獲活動を久々に実施した。
活動には隊員約20人が参加。米崎町の米崎地区コミュニティセンターで行われた出発式で隊員らは、各自集中して活動にあたることと、イノシシやクマはむやみに捕獲せず、状況に応じて対応することを確認した。
また、来賓の佐々木拓市長は「ニホンジカは農産物のほか、道路で車にぶつかる被害もある。皆さんの仕事ぶりはありがたい。危険も伴う活動なので、安全に活動を行ってほしい」とあいさつした。
式後、隊員らは散弾銃を手に氷上山へ入山。山中に隠れているニホンジカを追い出す班と、捕獲する班に分かれ、トランシーバーで連絡を取り合い活動にあたった。
細谷隊長(63)は「獣害によって、われわれが生活できなくなる状況も迫りつつある。イノシシは、ニホンジカより数自体は少ないとはいえ、今後被害の規模が逆転するかもしれない。きょうの活動はわれわれにとって、緊急性のある時どう動くかにもつながる」と、危機感を抱くとともに、野生動物の適正頭数維持への使命感を見せた。