数量低迷 金額は微増 大船渡市魚市場の5年度水揚げ実績 3年連続の2万㌧台に終わる

▲ 数量の半数を占める定置網の水揚げ。令和5年度は伸び悩んだ

 大船渡魚市場㈱(千葉隆美社長)が運営する大船渡市魚市場の令和5年度水揚げ実績がまとまった。数量は前年度比24%減の2万1547㌧で、金額(税込み)は同1%増の56億4022万円。数量では、定置網が前年を下回ったほか、多獲性魚種の一つであるサバ類が低迷し、3年連続で2万㌧台に終わり、東日本大震災以降では最低水準となった。一方、平均単価は261・8円で、前年度比で33%上昇した。(佐藤 壮)

 

 同社によると、魚種別実績のうち、サンマの数量は前年度比27%増の3878㌧。金額は同7%減の18億5441万円で、魚市場全体の33%を占めた。全国的に厳しい状況が続く中、地元漁船を中心とした水揚げで、数量、金額とも本州トップ。本州の数量に占める割合は41%に達した。
 マイワシの数量は同15%減の7918㌧だった一方、金額は同10%増の7億8382万円。多獲性魚のサバは、数量が同32%減の4331㌧と低迷し、金額も6億3865万円で前年度の87%にとどまった。
 ブリ類も数量は1693㌧で同12%減。金額は5億3430万円で前年度とほぼ同じだった。日曜日も開場して受け入れたカツオは693㌧で同6%増。価格は3億381万円で同26%増となった。
 4月には気仙沿岸の定置網から1匹平均約100㌔のクロマグロ265本が水揚げされた日もあり、年間数量は123㌧で前年度の1・5倍、金額は2億4833万円で、約1億1000万円伸びた。
 漁業種別では、イワシやサバ、ブリ類などを漁獲した定置網が数量1万747㌧で、同33%減。金額は22億1114万円で同2%減だった。数量は前年度よりも5000㌧以上少なくなり、魚市場実績全体の落ち込みにもつながった。
 魚種、漁業種別とも数量減が目立った一方、魚価は底上げの傾向があり、わずかではあるが前年度実績を上回った。平均単価が260円を超え、近年にない高水準で推移した。
 大船渡市魚市場は、震災が発生した平成23年度に数量が前年度比33・5%減の3万731㌧、金額が同43・5%減の38億円台まで落ち込んだ。水産施設の復旧が進み、26年度は、数量が5万2000㌧台、金額が70億円台と震災前の水準にまで戻った。
 しかし、27年度以降は主力魚種の不漁などが暗い影を落とす。令和3年度は、昭和49年度以来47年ぶりの2万㌧台となり、4年度、5年度も3万㌧台に戻せなかった。市水産業振興計画では水産加工・流通機能の強化として、魚市場実績の7年度目標値に「数量5万㌧、金額70億円」を掲げるが、厳しい状況が続いている。
 同社の佐藤光男専務は「大船渡は(北からの)親潮系の魚種で成り立ってきたが、近年は(南からの)黒潮や海水の高水温化の影響を受ける。サバは世界的に需要があるが、伸びなかった。マイワシなどの増加に期待したい。サンマも前年度を超える水揚げとなれば」と話す。
 年間水揚げ実績の推計は別表。