出向が縁 林野庁辞し市職員に転身 根木さん陸前高田で新たな一歩 「大好きになったまちの力に」
令和6年4月12日付 7面

この春、林野庁を退職し、陸前高田市職員として新たな一歩を踏み出した男性がいる。静岡県出身の根木浩輔さん(30)。令和2年4月に同市に出向し、2年間働いた経験が転身の決め手となった。「大好きになった陸前高田のために働きたい」。同市に根を下ろし、林業振興や地域活性化などに注力していく。(高橋 信)
同市の本年度新採用正職員は14人。市役所で行われた1日の辞令交付式で、根木さんは「公共の利益のために職務の遂行に当たる」と引き締まった表情で服務の宣誓を行った。
「三ヶ日みかん」が特産の旧三ヶ日町(現・浜松市)出身。自然が好きで、中学生の時に自転車で外を探検するうちに山への関心が芽生え、地元の高校を経て東京農工大に進学した。林野庁職員を志し、森林経営のあり方などを学び、山を管理する学生サークルにも入った。
平成29年4月に入庁。本庁や秋田県秋田市にある東北森林管理局などを渡り歩いた。目標としていた職に就き、ひたむきに働いていた中、転機が訪れた。地方自治体への出向で、陸前高田市役所勤務となった。
配属されたのは、農林課林政係。細分化されたタスクをこなすそれまでの専門業務と勝手が違う実務の連続に戸惑ったが、「仕事の守備範囲が広くて勉強になる」と次第に楽しくなった。
さらに、同市に引き込まれた理由が、人の温かさだ。「職場が本当にいい方ばかりで。市民とも距離が近く、さまざまな人と面と向かって仕事をする現場でのやりがいを学ばせていただいた」。休日には氷上山や原台山を散策し、豊かな自然を満喫した。
令和4、5年度は内閣官房に出向し、防災・減災の指針となる国土強靱化基本計画改定に係る業務に従事。「国全体の計画を作成する仕事もやりがいがあった。でも好きになった陸前高田市で働きたいという思いが勝った」と、30歳で別の道に進む決意を固めた。
職員採用試験を通過し、再び農林課林政係に所属。「出向の2年間は地域のことや仕事を覚えるので精いっぱいだった。これからは一つ、二つとステップアップしていきたい」と表情を引き締める。
市内の森林面積は1万8555㌶で、市総面積の約8割を占める。「陸前高田は林道や作業道が細かく整備されている。担い手の高齢化など課題は山積しているが、木材生産地としてのポテンシャルは高い」とうなずく。
「林政を引っ張っていく職員の一人としてこのまちで頑張る。それ以外の部署に移っても一から勉強し、市の力になれるよう業務に臨んでいく」と誓う。