関係機関連携しスタート 「高機能バイオ炭」実証試験 土壌改良への効果など検証へ
令和6年4月12日付 2面

養鶏業が盛んな住田町で、町による「高機能バイオ炭」の実証試験がスタートした。同町で製造された鶏ふんを原料とするバイオ炭に微生物を付着させて培養したものを、町内農家のほ場に散布し、土壌改良への効果などを検証する試み。全農や愛知県のスタートアップ企業「㈱TOWING」、県の協力のもと、今後3年間かけて効果を実証していく。(清水辰彦)
バイオ炭は、もみ殻や家畜のふんなどを炭にしたもの。TOWINGでは、バイオ炭に微生物を定着させた土壌改良剤「高機能バイオ炭」(宙炭)を開発・販売している。
宙炭を土に混ぜ、野菜くずや落ち葉などの有機肥料を加えると、微生物がそれらを効率よく分解して栄養をつくり、豊かな土ができる。通常は3~5年かかっていた農地の改良を、1カ月ほどに短縮することが可能だという。
住田町ではバイオ炭の原料となる鶏ふんが多く排出されており、町内でも鶏ふん炭が製造され、農業で活用されている。
町では5年度から、全農やTOWING、県農業改良普及センターと意見交換を重ね、高機能バイオ炭の実証試験の準備を進めてきた。
昨年12月には、町民の協力を得て世田米、上有住の計3カ所のほ場を実証試験のために確保。それぞれ約10㌃の広さで、5㌃は高機能バイオ炭を用いて、もう半分は従来の農法で栽培を行い、収量などの違いを比べる。
今月3日には、上有住のほ場1カ所で実際に鶏ふんを原料とする高機能バイオ炭を散布した。15日(月)には、残る2カ所でも高機能バイオ炭を散布する予定。
高機能バイオ炭は、本来であれば廃棄・焼却される植物の残りかす、家畜のふん、下水汚泥などを材料とするため、焼却による二酸化炭素の排出量を減らすことができる。また、材料を炭化させていることから、その性質上、炭素の固定や吸収効果にも期待できる。
昨年6月、TOWINGの「バイオ炭の農地施用によるCO2削減事業」プロジェクトが、J─クレジット制度認証委員会に認定された。
J─クレジット制度は、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証し、企業などとの間で売買できる形態にしたもの。
同町での高機能バイオ炭による実証試験もJ─クレジット発行対象となっており、町は将来的には高機能バイオ炭を用いて農業を展開する事業者のクレジット売却による収益確保も視野に入れる。
町農政商工課の佐々木圭一課長補佐は「住田の農業は高齢化もあって従事者が減ってきている。高機能バイオ炭の効果が実証されることで、効率的な農業につながっていけば」と期待を込める。