町内2ほ場に散布 高機能バイオ炭 土壌改良効果など実証へ

▲ 藤井さん方の畑に宙炭を散布する畑元さん(手前)ら

 住田町は15日、町内で「高機能バイオ炭」の散布作業を行った。鶏ふんを原料とするバイオ炭に微生物を付着させて培養したもので、町内農家のほ場に散布して土壌改良への効果などを検証する試み。同日は実証試験に協力している愛知県のスタートアップ企業「㈱TOWING」の社員が初めて町内での散布作業に加わり、全農や県など関係機関とともに現場を回った。
 バイオ炭は、もみ殻や家畜のふんなどを炭にしたもの。TOWINGでは、バイオ炭に微生物を定着させた土壌改良剤「高機能バイオ炭」(宙炭)を開発・販売している。
 この宙炭を土に混ぜ、野菜くずや落ち葉などの有機肥料を加えると、微生物がそれらを効率よく分解して栄養をつくり、豊かな土ができる。通常は3~5年かかっていた農地の改良を、1カ月ほどに短縮することが可能だという。
 15日は、TOWING事業開発部東日本事業開発責任者の畑元遼さん(38)が来町し、全農、県、町の関係者とともに上有住、世田米の1カ所ずつで散布作業を行った。
 このうち、上有住では藤井洋治さん(74)方の畑に散布。藤井さんの自宅裏には3㌃の畑が二つあり、このうち一つに鶏ふん炭を使った宙炭をまいた。もう一方の畑は、これまで通りの農法で栽培。5月ごろにズッキーニの苗を定植し、収量などの結果を比べることとしている。
 宙炭は、本来であれば廃棄・焼却される植物の残りかす、家畜のふん、下水汚泥などを材料とするため、焼却による二酸化炭素の排出量を減らすことができる。また、材料を炭化させていることから、その性質上、炭素の固定や吸収効果にも期待できるため、J─クレジット発行の対象となる。
 J─クレジット制度は、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証し、企業などとの間で売買できる形態にしたもの。
 同町での宙炭を使った実証試験もJ─クレジット発行対象になるといい、町は将来的には高機能バイオ炭を用いて農業を展開する事業者のクレジット売却による収益確保も視野に入れる。
 畑元さんは「町を含めて地域の主体的なプレイヤーが集まって取り組みをスタートできたので、地域の中でのバイオマスの循環の一歩にもなれば」と話していた。
 養鶏業が盛んな住田町では、バイオ炭の原料となる鶏ふんが多く排出されており、これを用いた鶏ふん炭も製造されている。町では5年度から、全農やTOWING、県農業改良普及センターと意見交換を重ね、高機能バイオ炭の実証試験の準備を進めてきた。
 昨年12月には、町民の協力を得て世田米、上有住の計3カ所のほ場を実証試験のために確保。本年度から高機能バイオ炭を用いた栽培と、従来の農法による栽培を行い、3年かけて収量などの違いを比べる。