オンライン対応刷新へ 施設予約や通報スムーズに、電子入札導入も 「デジ田」交付金で年度内実装目指す 

▲ 新たにデジタル戦略課を設置し、各種取り組みを進めている大船渡市

 大船渡市は本年度、国のデジタル田園都市国家構想(デジ田)交付金を活用し、オンライン上での利用手続きや情報確認をよりスムーズにできるよう機能強化を進めるほか、電子入札と入札参加資格申請受け付けの両システムを導入する。ソーシャルネットワークサービスのLINE(ライン)を入り口とした機能拡充を図り、市ホームページや市公共施設予約システムも刷新。いずれも年度内の実装・運用開始を見据える。(佐藤 壮)


 デジ田交付金を受けたのは「おおふなと版窓口DX(行かない窓口)」と、市入札関連業務デジタル化事業。同交付金は意欲的にデジタル実装に取り組む地方公共団体を国が支援するもので、市が採択を受けた「TYPE1」は、他地域などですでに確立されたモデル等を活用し、各種サービスを地域・暮らしに生かす取り組みを支援する。
 おおふなと版窓口DXの概算事業費は約5100万円で、交付金見込み額は1655万円。オンラインで手続きを完結することができる「行かない窓口」を目指し、ラインを入り口としてその機能拡充を図るとともに、市ホームページと市公共施設予約システムを刷新し、それぞれの機能連携を図ることで、利便性向上につなげる。
 ホームページは、スマートフォンからの「見やすい、見つけやすい、使いやすい」を意識し、行政情報の総合基地機能を強化する。具体的には▽オンライン申請や公共施設予約システムなどのデジタルサービス接続▽行政情報を整理し、利用者が必要な情報にアクセスしやすい環境を整備する▽オンラインに対応した手続き一覧、ごみ出し検索機能などを追加──などを見据える。
 外国語対応も充実させる方針。災害対応では緊急情報の迅速な発信に加え、アクセス集中にも耐えうる災害版ホームページへの円滑な移行にも対応する。こうした機能強化は、若手職員を中心とした「デジタル創生研究プロジェクト・チーム」での取りまとめを生かした。
 市のライン公式アカウントでは、トーク画面下部に固定で表示される「リッチメニュー」から市ホームページにつなげ、市民らが情報をより確認しやすいよう整える。緊急・災害時の広報媒体としての活用に加え、市民が道路の損壊情報などを通報できる仕組みづくりも進める。
 市民体育館やテニスコートなどの公共施設予約システムは、毎月1日から翌月利用の「仮申し込み」ができるが、アクセスの集中により手続きが進みにくく、以前から改善要望が寄せられていた。許可書を直接受け取るといった手続きも必要となっており、今回の刷新ではこうした現状課題の解決を進め、よりスムーズに利用できるサービスを目指す。
 本年度は上半期に仕様検討や公告、入札を進める方針。9月後半からシステム構築に入り、運用テストを経て、来年3月の実装を目指す。
 また、国や県などで入札関連業務のデジタル化が進む一方、市はこれまで、入札参加資格申請や入札会など、全て紙による対応だった。電子入札と入札参加資格申請の両システムを導入することで、事業者と市双方の負担を軽減し、業務効率化を図る。電子入札は今年11月、入札参加資格申請は来年2月の実装・運用開始を計画している。
 市はデジ田交付金を生かし、5年度から窓口改革を本格化させた。今年3月には、総合案内付近に番号札発券機を設置し、順次来庁者の申請に対応。「書かない×ワンストップ」の対応を取り入れている。
 税の一部や戸籍、住民基本台帳、印鑑に関する証明書発行は、申請用紙記入が不要となり、窓口で担当職員が要件を聞き、身分証明書などをもとに手続きに入り、来庁者は最後に署名するだけとなった。発行手数料の支払いでは、クレジットカードや電子決済など対応のレジも導入した。
 こうしたサービスは本年度、死亡・転出・転入・転居にも拡大し、7年度は出生・婚姻・離婚でも対応する方針。いずれも窓口の繁忙期を避け、年度下半期の導入を目指す。
 市では、公共スペースのワイファイ環境拡大といった「地域DX」の推進に関しても、具体的なあり方など検討を進める方針。本年度設置されたデジタル戦略課の炭釜秀一課長は「サービス向上に向け、より柔軟に改善を重ねたい。庁内横断的に関係課と協力しながら、新しいことに積極的に取り組むことができれば」と話す。