立ち寄りやすさ 今後も 碁石海岸インフォメーションセンター 開設からきょう10年 コロナ禍乗り越え観光案内回復

▲ 開設から10年を迎える碁石海岸インフォメーションセンター

 環境省の「グリーン復興ビジョン」に基づき整備された大船渡市末崎町の碁石海岸インフォメーションセンターは、25日で開設から10年を迎える。職員が常駐し、観光や自然環境に関する幅広い相談や、キャンプ場の利用申し込みに対応。同センターと合わせて整備された展望台などを巡るルートが定着し、コロナ禍を乗り越えて観光案内対応の実績も回復した。団体客が低迷するなど来訪形態が多様化する中、今後も利用目的に応じた立ち寄りやすい環境づくりを心がける。(佐藤 壮)


 東日本大震災後、環境省は三陸沿岸の国立公園再編を盛り込んだグリーン復興ビジョンを策定。碁石海岸再整備もこの一環で、同センターの新築やキャンプ場と乱曝谷展望台の再整備を柱に、県にも委託しながら各種工事が行われ、平成26年4月25日に開所式が開かれた。
 エントランス施設となる同センターは、自然環境や観光情報の発信などを担う。トイレも整備された。
 地場産材の杉を構造材、造作材に使用した木造平屋建て。太陽光パネルを使用した自然エネルギーの利用や、木質バイオマスを熱源とした暖房ボイラーの使用など、環境負荷低減も目指している。
 また、園地ゾーンでは、遊歩道をウッドチップ敷きで再整備し、乱曝谷付近には展望ウッドデッキを設置。キャンプ場の敷地造成を行い、通年利用を見据えた自動車対応のオートサイトも整えられた。
 センター内では、管理運営を担う市観光物産協会の職員がシフト制で常駐。併設するキャンプ場の利用申し込みに応じるだけでなく、来訪者の「今咲いている花の種類は」「おすすめの歩き方は」といった問いかけや、飲食・宿泊などの観光相談にも応じる。
 令和5年度の観光案内対応数は直接来訪2809件、電話1249件で計4058件。総数は平成26年度以降では最多となった。レストハウス前に観光案内所があった同16年は、直接来訪が5465件、電話133件の5598件だった。
 センター長の佐藤正光さん(55)は「かつて碁石海岸を訪れたことがある高齢の夫婦が道を尋ねに来たりするケースも多い。キャンプ場は家族連れの利用が定着した」と手応えを話す。
 この10年で、周辺環境も変化。全長約1000㌔に及ぶ自然歩道「みちのく潮風トレイル」の認知度が高まり、国内外からハイカーが訪れる。令和3年には県が整備を進めてきた一般県道碁石海岸線の末崎~碁石工区が供用。三陸沿岸道も全線供用となり、交通アクセスが向上した。
 一方、観光入り込み状況をみると、令和5年度の碁石海岸における観光客数は6万4258人。コロナ禍前の元年度と同水準だが、14万人を超えていた平成16年度にはほど遠い。同年度は大型バスが748台だったのに対し、令和5年度は197台にとどまった。
 前年度の月別入り込み状況では、最多は隣接する世界の椿館・碁石で、「つばきまつり」が開催されていた2月で7459人。碁石観光まつりが開催された5月も6673人と多かったが、キャンプ需要や大型イベントがない時期の来訪をどう伸ばすかも課題となっている。
 佐藤さんは「夏場は市街地よりも涼しく、散歩などでの利用も多い。咲いている花の種類など、季節ごとに違った魅力がある。観光客だけでなく、地元の人にも、もっと多く来てもらいたい。皆さんが訪れてくれたからこその10周年。これまで以上に感謝を込めながら迎えたい」と話す。
 同センターでは開設10年を記念し、5月後半から碁石海岸に関するポストカードの配布を計画している。