「知らない世代」に事実と教訓を 東日本大震災津波伝承館 本年度も学校見学受け入れスタート 利用促進へさらなるPR図る

▲ 6年度の修学旅行受け入れが始まり、北広島市立西部中の生徒らが館内を見学

 陸前高田市の東日本大震災津波伝承館では、令和6年度も学校見学を受け入れている。24日には、修学旅行としては本年度第1号となる北海道の北広島市立西部中学校(松橋辰吾校長、生徒112人)の3年生41人が来館し、震災による県内の被災状況や復興の歩みなどを学んで防災意識を高めた。同館によると、6年度は学校からの予約が前年度から若干減少傾向にある一方、県外校や一般団体の利用は増加しているといい、当時を知らない世代が増えて記憶の風化が叫ばれる中で、震災の事実と教訓を発信すべく、さらなる利用促進に向けたPRを図っていく。(三浦佳恵)

 

 同館は、震災の事実や教訓、復興までの歩みと支援への感謝を発信する施設として、県が高田松原津波復興祈念公園内に整備し、元年9月にオープン。震災・防災学習の拠点として国内外の幅広い世代が来館しており、小学校から大学までの各学校も利用している。
 オープン翌年の2年以降は、新型コロナウイルスが流行。2度の臨時休館を余儀なくされた。一時は団体予約のキャンセルが相次ぎ、来館者数が伸び悩んだが、家族や個人での利用は絶えず、修学旅行の会場見直しで県内や東北の小中学校による見学が増えた。
 小・中・高校、大学などの学校利用数をみると、2年度が242校(県内188校、県外54校)、3年度が330校(県内231校、県外99校)、4年度が343校(県内231校、県外112校)と右肩上がりで推移。毎年の利用が定着してきた学校もある。
 5年度は、新型ウイルスの5類移行で修学旅行の会場地をコロナ禍前に戻した学校もあり、総数は279校(県内190校、県外89校)と減少に転じた。学校別の内訳は、小学校103校、中学校75校、高校65校、大学など36校。
 一方で、5類移行に伴う行動規制の緩和、昨年6月の全国植樹祭開催などを受け、一般の団体客は増加。同11月には開館からの来館者数が延べ90万人を突破し、100万人の大台も近づいている。
 6年度の予約状況について、早坂寛副館長は「昨年度に比べると全体的な学校利用は若干減っているものの、県外の学校や高校、大学などは増えている。一般の団体客も増加している」と話す。
 24日に修学旅行で訪れた西部中は、4年度以来2年ぶり、2回目の来館。生徒たちは同館解説員の案内を受けながらクラスごとに館内を巡り、地震や津波のメカニズム、震災被災地の状況、国内外から寄せられた支援、防災の心構えなどに理解を深めた。
 松橋校長は「教育の中に防災学習を盛り込んでいる。生徒たちには館内見学を通じて、さまざまな地域の防災を身に付け、災害から命を守る意識を高めてほしい」と期待を寄せた。
 同館では、新型ウイルスの流行期には休止していたメッセージボードの利用や書籍などの閲覧を再開。今年3月には、開館後初めて展示内容を一部更新した。メッセージボードには、世代を超えた来館者の率直な感想、復興や防災活動に対する決意などが記されている。
 震災から13年余りがたち、当時を知らない世代が増え、被災地でも記憶の風化が懸念されている。震災の事実や教訓を後世に伝え、今後起こりうる災害から大切な命を守るために、同館が果たすべき役割は大きい。
 学校利用の促進に向け、同館では学校や校長会でのPRにより注力し、市内の関係機関とも連携を図っていく考え。一般客らにも学びや発信の機会を設けていく。
 早坂副館長は「震災の記憶がない子どもたちに、当時の事実と教訓はもちろん、国内外からの支援に対する感謝も忘れないでいてほしいという思いがある。そのためにも、多くの学校に来てもらえるようPRをしていきたい」と力を込める。