注目度もじっくり上昇 越喜来の杉若さん昔ながらの塩作り ふるさと納税の返礼品にも

▲ 地道に塩作りに励む杉若さん

 越喜来湾沖合で海水をくみ、まきストーブでじっくり煮詰めて取り出す塩作り──。そんな昔ながらの手作業にこだわった製品が、大船渡市のふるさと納税返礼品などとして注目度が高まっている。三陸町越喜来で「三陸の百姓小屋」として農産品などを手掛ける杉若輝夫さん(81)は先月も、地道な作業に励んだ。昨年からは盛岡市内のホテル料理にも採用され、県内外でじんわりと広がる評価に手応えを感じている。(佐藤 壮)

 

 先月下旬、ログハウスの自宅脇に構える作業場で、まきストーブに向き合う日が続いた。3日かけて煮詰めると、石こうを含む白い沈殿物が見えるようになり、ろ過して1日程度熱を入れる。
 さらに自然乾燥させながら水分やにがりを分離させるなど、機械を使わず地道な作業が続く。900㍑の海水から、30㌔ほどの原塩抽出を見込む。
 塩作りはもともと、浜仕事や農作業が一段落した冬場を中心に、三陸各地で行われていた。地域の古老から「作っている人がいなくなった。やってみてはどうか」と声をかけられ、住民から鍋などを借りて平成18年から挑戦。塩製造に関する東北財務局への届け出も済ませている。
 「海水塩はエコのかたまり」と杉若さん。地域住民が協力して船を出し、大量のまきは、地元事業者が確保。ストーブなどをつくる鉄工所や、まき置き場を貸してくれる住民にも支えられてきた。
 マグネシウムをはじめミネラル成分を豊富に含み、まろやかな味としてファンは多い。昨年、市ふるさと納税の返礼品として出したところ、県外在住者10人以上から受注が舞い込んだ。盛岡市内のホテル料理でも採用され、先月はホテル側が好む粒の大きな塩を目指して火加減を調整するなど、新たな挑戦にも余念が無い。
 昨年以降の注目度上昇に杉若さんは「ふるさと納税は、中間支援業者が熱心に準備を手伝ってくれて、予想以上に注文があった」と語る。
 熱との勝負でもあり、夏場に煮詰める作業は行わない。これまで取り出した塩を袋詰めし、異物混入が無いかを確認して「三陸の海水塩」として販売。地元・越喜来に構える道の駅さんりくやニューオキライに加え、マイヤ大船渡店や五葉温泉、碁石海岸レストハウスなどにも出している。
 「こだわりじいさん」を自称して地道に続け、復活から20年が近づいている。杉若さんは「自然乾燥や塩を砕く手作業など、体が動くうちはこの方法で続けていきたい」と話し、笑顔を見せる。