東北一へ 地道に産地拡大 ゴールは年間収量30㌧ 北限のゆず研究会(別写真あり)

▲ 「北限のゆず」の安定生産に向け、1200本を植える3カ年計画が始動

 陸前高田市の北限のゆず研究会(佐々木隆志会長)は、ユズ増産に向けて産地の拡大に乗り出した。本年度からの3年間で新たに1200本を市内に植える計画。産地の北限が特色で、需要が堅調な気仙産ユズ。年間収量は昨年度12㌧に上り、過去最多を更新した一方で、豊作と不作を1年周期で繰り返すことなどから安定生産が課題となっている。最終ゴールは東北一とされる年間30㌧。新規生産者の確保と苗木の植樹をコツコツ進め、収量アップへ一歩ずつ前進する方針だ。(高橋 信)

 

本年度から3年間 苗木1200本植樹


 本年度は高知県産の苗木400本を市内に植える計画で、このうち320本は米崎町佐野の遊休地約50㌃で育てる。キックオフとなった4月27日、現地には気仙のほか、盛岡市や一関市などから13人が集まり、協力しながら畑の一部に13本を植えた。
 青空の下、和やかに作業が進み、自分が植えた苗木の成長を確かめられるよう、写真を撮る人の姿もみられた。研究会によると、早ければ3年後に実をつけ、5、6年後からまとまった量の収穫が見込めるという。
 盛岡市から参加した作山美穂さん(41)は「収穫イベントには参加したことがあるが、植樹は初めて。黄色い実がたくさんなる日が待ち遠しい」と小さな木を見つめた。
 植樹は28日も同じ場所で行われ、市内外の14人が参加した。
 陸前高田市内各地に生えているユズ。200年以上前からあったとされるが、その由来は諸説あり、主産地が西日本のユズの木が同市に数多くあるルーツは明らかになっていない。産業用ではなく、家庭の庭木としてほぼ自家消費されていたが、「北限のゆず」として売り出すことで地域活性化につなげようと、平成25年、市内の農家や障害者支援施設などが研究会を立ち上げた。
 収量は2㌧台にとどまる年もあれば、10㌧前後に跳ね上がる年もあり、安定的な生産が大きな課題となっている。豊作と不作の年を交互に繰り返す「隔年結果」の果実とされるユズの性質が主な要因だが、同市の場合、もともと家庭用として扱われていたため、管理が行き届いていない木が多く、年ごとのばらつきがさらに顕著になっていた。
 そうした状況を打破すべく、研究会は令和4年度、現状の把握から始めようと、市全域と大船渡市の一部を対象地域に、初となる園地調査を実施。その結果、生産者数は約180人で、木の本数は少なくとも約880本あることが分かった。
 この調査結果を踏まえ、次なる一手が1200本の苗木植樹だ。産地拡大のため、初心者でも栽培できる生産マニュアルも作成し、新規の生産者に配布している。
 本年度の収量は7・5㌧を見込む。研究会は令和12年までに、年間30㌧達成を目指す。
 佐々木会長は「昨年度はこれまでで最多の12㌧を収穫できたが、生産はまだまだ不安定で、課題は多い。東北一の産地を目指し、一つ一つステップアップしていき、30㌧をクリアしたい。そのために関係者一丸となって頑張っていく」と話す。