薫風になびく復興の願い 慈恩寺がこいのぼり掲揚 13年前の支援物資(別写真あり)
令和6年5月2日付 3面

陸前高田市広田町の慈恩寺(古山昭覚住職)は端午の節句に合わせ、東日本大震災の支援物資として届けられたこいのぼりを掲揚している。復興への願いがこもった大小のこいが、避難所となった同寺の境内を悠々と泳ぎ、若葉の季節の到来を告げている。
こいのぼりは、平成23年の東日本大震災発生から間もなく、避難所となっていた同寺への支援物資の中に入っていたもの。同年の端午の節句に境内に揚げて以降毎年、普段から境内を清掃する檀信徒とともに掲揚作業を行っている。
震災直後の混乱期に届けられたため、こいのぼりの提供者は不明のままだが、季節行事の道具が届いたことについて古山住職(45)は「当時の住民は何より、いつも通りの日常生活を取り戻したかった。支援者の中にも、住民はそう思うだろうと考えた方がいたのかもしれない」と振り返る。
その後、年がたつにつれて、子どもが成長し端午の節句を祝わなくなった家庭からもこいのぼりが寄せられた同寺。住職の「使わずにしまっておいては意味がない」との思いから、それらも揚げるようになった。
現在では、真鯉が4本、緋鯉が3本、青鯉が6本、吹き流しが2本にまで増えた。古山住職は「さまざまなところから集まったので、よく見るとそれぞれ違いがある」と話す。
今年は4月30日に掲げ、今月11日ごろまで境内を飾る予定だが、6月の旧暦の端午の節句にあたる期間に再び揚げることとしている。
加えて同寺は先月から、亡き人への〝宛てどころのない手紙〟を受け入れる同町の私書箱「漂流ポスト」の管理を引き継いだ。投函された手紙は毎年供養も行っており、震災で大切な誰かを失った悲しみを和らげる活動を続けている。(齊藤 拓)