「飯森の化石産地」を文化財に 市が指定 商業目的の乱掘防止へ

▲ 「飯森の化石産地」から産出された化石(陸前高田市提供)

 陸前高田市は、さまざまな化石が産出される矢作町飯森の南部北上山地約69・5㌶について、「飯森の化石産地」として、市指定文化財に指定したと発表した。古くから専門家による調査・研究が行われていた一方で、商業目的の乱掘などが発生していることから、適切な保存・活用のため指定した。市内の指定文化財は国・県指定分を含め、今回で70件となった。(高橋 信)


 指定は4月1日付で、市指定は平成28年以来8年ぶり。文化財の種類は天然記念物に属し、地質鉱物としては初の指定文化財となった。
 市によると、南部北上山地には約2億9900万年~2億5200万年前の「ペルム紀」に堆積した地層が広く分布している。
 ペルム紀は、古生代(約5億4200万年~2億5200万年前)最後の地質時代に当たる。この時代の末期、それまで繁栄していた節足動物の三葉虫や原生動物のフズリナなど、多様な生物の大量絶滅が発生したとされ、およそ3億万年続いた古生代は幕を閉じ、中生代に入る。
 宮城県気仙沼市北部から飯森地域にかけては、「上八背層」(約2億6500万年前)の地層が分布。腕足類、三葉虫、巻き貝など、さまざまな古生代の化石が産出され、量、種類ともに全国的にもまれなほど多産されることから、学術的な調査・研究のフィールドとして活用されてきた。
 一方で近年、一帯から採取したとみられる化石がインターネット上で販売されるなど、限りある貴重な地域資源の乱掘が懸念される事案が発生。これらを踏まえ、商業目的の採取を禁じ、市の財産として保護しようと、指定文化財に加えることとした。
 指定地で化石採取を希望する場合は、市教委に対して事前に現状変更の許可申請が必要となる。終了後は速やかに報告することが義務づけられる。詳細な指定範囲は、化石保護の観点から明らかにしていない。
 市内指定文化財の内訳は、国指定が6件、県指定が16件、市指定が48件。市立博物館は7月、飯森の化石産地の特別展を開催する。
 市教委の千葉達教育次長は「地元の大切な資源であり、自然や地質構造の歴史を解明するうえでも保護すべきもの。研究の場として活用してもらえるよう周知を図っていく」と話す。
 問い合わせは市教委管理課(℡54・2111内線556)へ。