陸前高田から全国に歌声 奇跡の一本松ホール会場にNHKのど自慢 開館5周年記念 公開生放送

▲ フィナーレも大きく盛り上がったNHKのど自慢

 「NHKのど自慢」の公開生放送が5日、陸前高田市高田町の奇跡の一本松ホールで行われた。国民的音楽番組ののど自慢。4年前、同ホールの開館記念として2度企画されたが、新型コロナウイルス禍でともに中止となり、今回、地元側にとって念願の開催となった。予選を勝ち抜いた20組が、東日本大震災を経て生まれ変わったまちなかと全国のお茶の間に自慢の歌声を届けた。(高橋 信)

 

 一本松ホールの開館5周年を記念し、NHK盛岡放送局と市が主催。ゲストに歌手の稲垣潤一さんと山内惠介さんを迎え、約500人が来場した。
 本選でマイクを握ったのは、前日の予選会出場の200組程度から選ばれた12〜82歳の20組。
 約40年前に大船渡市で開かれたのど自慢でも本選のステージに立って合格したという米崎町の小山芳弘さん(72)は『庄内しぐれ酒』を歌い、今回も三つの鐘を鳴らした。
 自身が副理事長を務める高田松原を守る会のビブスを着て、高田松原で異常発生しているつる性植物のクズで作った帽子をかぶって熱唱。「まさか今回も合格をもらえるとは思ってなくて。天国に昇った気分。高田松原のPRにもつながれば」と満面の笑みだった。
 本選出場者のうち、最年少の齋藤あかりさん(高田第一中1年)と菊池里歩さん(高田東中1年)の2人は、そろいのかすりの着物姿で県民謡『外山節』を披露し、見事合格を獲得した。
 地元の民謡教室に通う同い年の仲良しコンビで、ともに10代ながら県内外の民謡大会で好成績を収める実力者。齋藤さんは「鐘が三つ鳴ったときは信じられなかった」と驚き、菊池さんは「のど自慢に出られてうれしい」と声を弾ませていた。
 菊池さんの母・静さん(46)=米崎町=は「娘がのど自慢に出るという夢が叶い、感無量。あかりちゃんと仲良く歌うことができて100点満点でした」と喜んでいた。
 広田町の小松直樹さん(27)は、段ボールやカラーテープで作ったショルダーキーボードを肩に掛け、ノリノリで登場。「TM NETWORK」の楽曲で盛り上げ、特別賞を受賞した。
 小松さんは「本選に出て、さらに特別賞ももらえるとは思いもしなかった」と感激。「のど自慢が開催され、地元が大きく盛り上がったと思う」と振り返った。
 「今週のチャンピオン」には、『津軽海峡冬景色』を歌った米国出身のスーザン・タートさん(36)=花巻市=が選ばれ、割れんばかりの拍手に包まれた。
 奇跡の一本松ホールは、震災で全壊した市民会館と中央公民館の機能を併せ持ち、令和2年4月に開館した。
 NHKのど自慢は同年5月に開催される予定だったが、コロナ禍で中止。その後、同年8月に改めて開かれることが決まったが、コロナ感染拡大に伴い、再び中止となった。
 コロナの感染症法上の位置づけが5類に引き下げられた中、ようやく開催がかなった同市でののど自慢。インターネットで視聴できる「NHKプラス」では、12日(日)まで配信している。