新型コロナウイルス/感染状況 収束には至らず 気仙 きょう5類移行から1年 暮らしでの予防対策続く

 新型コロナウイルスの感染症法上における位置付けが5類に移行されて、8日で丸1年となる。県の発表によると、移行後の昨年5月8日から今年4月28日までの間に気仙(大船渡保健所管内)の対象医療機関(5カ所)を受診した実質患者数は2377人。この1年でさまざまな行動規制が緩和され、徐々にコロナ禍前の生活環境に戻ってきている一方、感染状況はいまだ収束に至ってはおらず、当面は予防対策を講じながらの「ウィズコロナ」の暮らしが続きそうだ。(三浦佳恵)


 政府は昨年5月8日、新型ウイルスを医療機関などが全感染者を届け出ねばならない2類感染症から、季節性インフルエンザと同様の5類に移行。法律に基づく入院措置や勧告、外出自粛要請などがなくなり、先行して緩和されたマスク着用とともに個人の判断に委ねられた。
 医療費の自己負担額、ワクチン接種などに関しても、移行期間を経て見直した。今年4月には医療体制が通常の形に戻り、医療費はほかの疾病と同様に窓口負担となった。
 5類移行に伴い、気仙の公共施設や店舗などでも、状況に応じて体温計、消毒液、アクリル板等の撤去、密を避けるために調整していた座席数、来場者数を元に戻すといった動きが見られた。感染拡大期間中は自粛されていた対面型の催しも、各地で再開している。
 陸前高田市の東日本大震災津波伝承館では5類移行後、館内受付に設置していた体温計を撤去。不特定多数の人が触れるメッセージボードや書籍資料なども、手指消毒のうえで利用を再開した。県外からの来館者も増え、今年のゴールデンウイーク期間中の1日当たり平均来館者数は、過去最多の昨年を上回る1863人となった。
 一方で、解説員らスタッフは館内ではマスク着用を徹底し、感染予防への配慮が続く。早坂寛副館長は、「5類移行後は、確実に来館者が増えている。スタッフは感染対策を徹底しながらも、来館者にはコロナ前の形で見学をしてもらいたい」と話す。
 徐々にコロナ禍前の生活に戻りつつある中で、感染患者の発生は続いている。現在も仕事や外出時、人と会う際にはマスクを着用する人の姿が多く見られる。
 県が週1回発表している新規患者数の動向によると、5類移行後の5年第19週(5月8~14日)から最新の6年第17週(4月22~28日)の計51週(別表参照)にわたり、気仙の対象医療機関を受診した新型ウイルスの実質患者数は2377人。この人数から算出した1週間当たりの平均患者数は46・6人だった。
 移行後最初の患者数は11人だったが、7月以降に増加傾向がみられ、第33週(8月14~20日)には最多の159人を記録。その後は秋にかけて減少が続き、第47週(11月20~26日)には移行後最も少ない8人となった。
 今年に入ってからはやや増加に転じたものの、第10週(3月4~10日)以降は50人を下回り続けている。
 5類移行後、患者を届け出るのは定点把握の対象医療機関のみとなり、このほかの医療機関受診者や市販の抗原検査で陽性を確認した未受診者は含まれておらず、実際はこれより多くの感染者が出ているとみられる。全県の実質患者数は3万2229人だった。
 気仙でのクラスター(感染者集団)発生数は20件。場所別にみると、多い順に高齢者施設14件、医療施設3件、学校2件、教育・保育施設1件となった。
 大船渡市大船渡町の県立大船渡病院(中野達也院長)では、インフルエンザの流行もあり、5類移行後も来院者の検温やマスク着用、入院患者との面会禁止といった感染対策の徹底が続く。この1年の感染状況について、「(昨年夏の)第9波にはそれなりに患者数が増えたが、全体的には落ち着いている印象。入院患者は80代以上の高齢者が多いものの、移行前のように対応しきれないほどの数ではなくなっている」としている。
 一方で、移行後はインフルエンザなどほかの感染症が流行している現状であることや、大型連休後の感染拡大も懸念。「引き続き感染に注意し、症状があれば受診をしてほしい」と呼びかけている。