空き家の悪影響抑制へ 「危険除却工事補助」の事前調査受付開始 利活用や処分促進の〝呼び水〟にも
令和6年5月14日付 1面
大船渡市は13日、「危険空き家除却工事補助金」の事前調査受け付けを始めた。管理不全な状態が続いて周辺に悪影響を及ぼす空き家の処分を後押しし、解体する所有者らに最大50万円を支給する制度で、毎年多くの相談が寄せられる。また空き家バンクを通じて売買・賃貸借し、居住で利用する「空き家改修補助」の申請も受け付けている。市では該当する所有者の申請に加え、地域課題になっている空き家の利活用や処分に向けた関心喚起にも期待を込める。(佐藤 壮)
危険空き家の除却工事補助は、管理不全で周辺に悪影響を及ぼしているか、その恐れがある空き家の解体などを支援。居住用の空き家のうち、使用実績が1年以上なく、倒壊や部材の落下・飛散などの危険があり、通行人や他所有者の建物など、周辺に悪影響を及ぼす建造物の除却工事費に対して助成する。
空き家の所有者か、相続人が対象。原則的に建物すべての除却工事が対象で、補助率は5分の4。上限額は50万円となっている。
専用住宅か、店舗・事務所等との併用住宅に適用。併用住宅の場合は、住宅部分の面積が延床面積の2分の1以上必要となる。長屋や共同住宅(アパートなど)は対象外。建て替えのための除却には助成しない。
13日から事前調査申請を受け付け、補助金交付申請開始は6月下旬を見込む。補助金の交付決定日以降に着工し、来年2月末までの完了を求め、工事完了後の交付となる。事前申請の締め切りは12月27日(金)。
令和5年度は2件を採択。相談は26件寄せられた。建て替えに伴う除却は該当しないほか、補助金利用時は空き家の敷地内の建物を全て取り壊し、更地にする必要がある。また、住宅や道路が隣接しているといった環境なども、事前調査で判定する。
制度を通じて所有者が解体を考え、実行する契機にもつながっているという。市によると、5年度における補助金関連も含めた空き家全般の相談件数は95件だった。
市住宅管理課の三浦寛基課長は「空き家の管理は基本的に持ち主の責任となる。相談に来てもらうことで、補助に該当するかどうかだけではなく、空き家バンクの活用など、利用や処分に向けてさまざまなサポートを紹介することにもつながる」とし、期待を込める。
一方、改修工事補助事業は、中古住宅の流通や地域の活性化を図るとともに、生活環境の保全や移住・定住の促進につなげるもの。市の空き家バンクを利用して売買契約や賃貸契約した住宅の改修工事(30万円以上)を市内施工業者が行う場合、費用の一部を助成する。
本年度は居住用のみが対象。補助率は2分の1で、上限は50万円。前年度は2件に採択され、8件の相談があった。
要件には▽改修後3年間は居住する▽昭和56年5月31日以前に建築された住宅は、耐震診断・耐震改修工事を行う▽土砂災害特別区域外にある住宅──などがある。
危険空き家除却工事補助と同様、申請は12月27日まで受け付け、予算がなくなり次第終了。工事は来年2月末までの完了を求める。集会所や福祉活動施設など、公益性が高い事業を行う施設としての利活用を検討している場合は、別途相談に応じる。
建物全体に危険が認められる空き家は、破損が著しく、管理状態が不良なもので、自然災害時の倒壊や害獣の侵入、景観悪化など、近隣の住民生活や道路環境にも悪影響を及ぼす可能性がある。令和元年度の実態調査では、市内の空き家件数は653件。このうち「全体に危険が認められ、放置すれば、危険性が高まると考えられる」は118件だった。
空き家補助に関する申請、問い合わせは住宅管理課(市役所本庁舎3階、℡27・3111内線324)。両補助金制度の概要は別掲。