組合員収入増へウニ畜養 道の駅高田松原で6~10月の販売目指す 広田湾漁協 要谷漁港活用 ナマコも

▲ ウニの成育状況を確かめる漁協職員

 陸前高田市の広田湾漁協(砂田光保組合長)は、気仙町の要谷漁港(双六地区)でウニとナマコの畜養事業に取り組んでいる。市が令和4年度に試験的に始め、3年目の本年度から漁協独自に実施。同町内の天然ウニはほぼ自家消費されているが、実入りの悪い痩せたウニに餌を与えて太らせたあと、道の駅高田松原で販売することで、地元組合員の収入増、未利用の水産資源の有効活用などにつなげる。ウニは本年度、6~10月の販売を目指し、ナマコは2年前に投入した種苗の成育を継続調査中。一連の仕組みが自営事業として成り立つか今後の展開に注目が集まる。(高橋 信)

 

漁港で畜養されているウニ

 ウニは同漁協気仙支所管轄の湾内2カ所で採捕し、蓄養用の漁港内に移植している。ウニが沖に流れないようL字型の岸壁に沿うように海中フェンスを設置しており、壁からフェンスまでの海中で育てている。
 本年度は800~1㌧程度のウニを近く投入する計画。餌として養殖コンブをまき付けたロープをつるし、品質を高める。
 販売は6月中の開始を目指し、漁協の直営店が入る道の駅高田松原に、基本的に週1回のペースで出荷する。天然ウニ漁の最盛期は夏だが、畜養ウニは漁期外の10月末まで、観光客が集う週末を狙って販売することとしている。
 ナマコは事業初年度の4年度、県栽培漁業協会から種苗約1万匹を仕入れ、漁港内に放流。出荷には至っておらず、本年度も経過観察していく。
 三陸沿岸では近年、ウニが海藻を食べ尽くすことで生じる「磯焼け」が問題視されている。餌を奪い合うため、痩せたウニが増え、同じく海藻を餌とするアワビの数が減少することから、浜の大きな課題となっている。
 県のまとめによると、陸前高田市の藻場面積は東日本大震災前(平成17〜23年平均)290㌶だったのに対し、令和2年は41㌶。消失率は85・9%で、本県沿岸市町村で最大だった。
 こうした状況を踏まえ、市は磯焼け対策の一環などとして、4年度に実入りの悪いウニを1カ所に集め、畜養できないか確かめる実証実験に乗り出した。同漁協の気仙支所管内では天然ウニを自家消費するのが一般的といい、品質を高めて商業用として扱うことで組合員の収入増につなげる目的も兼ねている。
 蓄養場は要谷漁港のうち、利用頻度の低い一角を生かして設置し、初年度の実験は市からの委託を受け、漁協が実施。昨年度は実施主体を市から漁協に移行する期間とし、7~10月、道の駅高田松原で畜養ウニを販売した。本年度は市からの補助に頼らず、単独で展開しており、採算性が確保できるか見極める年ともなる。
 気仙支所の担当者は「実入りの悪いウニの採捕やむき身作業をはじめ、組合員や漁家の協力のもと実施できている事業。少しでも組合員の収入につながるよう、また漁港の有効活用、道の駅で販売している広田湾産水産物のPRにもつながるよう頑張りたい」と意気込む。