鳥獣被害対策実施隊の6年度捕獲目標 イノシシ前年比4倍の20頭 市、報償金増額し活動後押し

▲ 4月に行われた鳥獣被害対策実施隊によるニホンジカの一斉捕獲

 陸前高田市鳥獣被害対策実施隊(細谷忠弘隊長)は本年度、イノシシの有害捕獲目標を前年比4倍の20頭に定め、被害対策に取り組んでいく。令和5年度の捕獲数が16頭に上り、前年から8倍に急増した事態を踏まえ、農作物や人身被害が懸念されることから目標数を大幅に上げた。市は捕獲報償金を増額するなどして活動を下支えする。(高橋 信)

 

 市によると、本年度の捕獲目標数はニホンジカ1200頭、イノシシ20頭、ハクビシン等小動物(タヌキやアナグマなど含む)300頭、鳥類200羽。イノシシ以外は前年と同じ数に設定した。
 市内では平成27年、矢作、横田両町で初めてイノシシが目撃されて以来、捕獲に取り組んできた。29年6月、横田町内で初めて農業被害の報告があった。
 過去5年間のイノシシの有害捕獲数は年平均2頭前後だが、5年度は16頭と一気に増えた。近隣自治体では深刻な農業被害が確認されており、市は警戒を強めている。
 イノシシの捕獲報償金は本年度、前年比4000円増の1頭当たり1万4000円に設定。さらに市は現在2基ある箱わなの追加購入を検討している。
 市では急増したニホンジカなどの農業被害が深刻で、市の調査結果によると、平成24年度の被害面積は20・5㌶、被害額1114万円に上った。
 これを受け、25年5月に高田猟友会高田支部のハンターでつくる実施隊が発足。捕獲活動が進められ、令和4年度は被害面積6・25㌶、被害額146万円に減少した。5年度の捕獲実績はニホンジカ1109頭(前年比22頭増)、ハクビシン等小動物441頭(同123頭増)、鳥類118羽(同51羽減)だった。
 本年度は隊員47人で構成し、前年から4人増員。4月には近年休止していたニホンジカの大規模な一斉捕獲を市内で2度実施し、計24頭捕獲した。
 市は新たなハンターの確保や実施隊の活動を支援しようと、狩猟免許取得に要する経費や銃器・わななどの購入費の一部を補助している。農地に防護網や電気柵を設置する農業者や組合向けの補助制度も設けている。
 市農林課林政係の蒲生夏生係長は「実施隊の懸命な活動のおかげで捕獲は進められているが、依然として農作物被害はあり、予断を許さない状況となっている。さらにクマやイノシシによる人身被害も懸念される。捕獲体制の強化とともに、農地を守る対策を県などの関係機関と連携しながら実施していきたい」と気を引き締める。

 

クマの出没にも注意を/市

 

 陸前高田市は、県内でツキノワグマの出没、人的被害が相次いでいるとして、注意を呼びかけている。
 県によると、令和5年度におけるツキノワグマの出没件数は5877件、人身被害は46件49人となり、いずれも過去最多を記録。気仙でも出没、目撃事案が相次ぎ、昨年12月には大船渡市立根町内で1件の人身被害が発生した。
 陸前高田市における本年度目撃件数は、21日現在4件。レジャーなどで山林に入る機会が多い時期であることから、市広報などを通じて対策を周知している。
 山林内の対策は▽事前に入山地域の出没情報や被害情報を確認する▽複数人で行動し、鈴やラジオなどの音が出るものを携行する▽明け方、夕方の入山を避ける▽撃退グッズを携帯する▽クマのふんや足跡を見たら引き返す──。
 人里では▽廃棄野菜や生ごみ、コンポストの管理を適切に行う▽農地周辺のやぶを刈り払い、見通しのよい環境を整備する▽屋外やクマが侵入できる納屋に果物、穀物、ペットフードなどを保管しない──といった対策を促す。
 万が一、クマに遭遇した際には▽目を離さず、静かにゆっくり後退する▽クマとの間に木や岩を挟むようにする──などの対処をとって身を守るよう呼びかけている。