さらなる充実と利用促進を 東日本大震災津波伝承館 本年度初回の運営協議会

▲ 本年度の事業計画などを巡って意見を交わした運営協議会

 陸前高田市にある東日本大震災津波伝承館の運営協議会(会長・南正昭岩手大学理工学部教授、委員11人)は21日、気仙町の国営追悼・祈念施設管理棟セミナールームで令和6年度第1回会議を開いた。5年度の取り組み実績と本年度の事業計画を巡って意見交換を行い、委員らからはさらなる展示の充実や関係機関とも連携した利用促進などが求められた。
 運営協は館長(知事)の諮問機関で、この日はオンラインを含む委員9人が出席。同館の早坂寛副館長は、「これからも震災の事実と教訓を世界中の方々と共有し、国内外からの支援への感謝を発信していきたい」と、南会長は「震災伝承をどう進めていくかが、この協議会の大きなテーマ。初めてのことも多い中で、それぞれの意見を受け、先に進んでいければ」とあいさつした。
 協議では、同館側が5年度の取り組み実績と6年度の事業計画を説明。委員らから質問や意見を求めた。
 取り組み実績によると、5年度の来館者数は延べ25万4315人(前年度比4万7306人増)となり、令和元年9月に開館して以降、最多数を更新した。開館から今年3月末日までの累計来館者数は94万9373人。
 1日当たりの平均来館者数は平日が609人(同124人増)、土・日、祝日は941人(同165人増)といずれも前年を上回った。
 団体予約状況をみると、学校で多かったのは県内が小学校で、県外は高校。一般は東京を中心とした観光ツアーが突出して多かった。学校のリピート率も示され、県内は80・1%、県外は49・0%といずれも前年度を上回った。
 メインの展示事業では、常設展示の「ゾーン3・教訓を学ぶ」内にある震災発災からの記録を5年間から10年間の内容に更新。他団体との共催を含む計7回の企画展示を実施し、研修などによる解説員の資質向上、避難訓練、新型コロナウイルス対策といった安全な見学環境の確保にも努めた。
 教育・普及事業では「いわてTSUNAMIメモリアルセミナー」として、企画展示に関連した学びや体験の場を設けた。県内外の学校、旅行会社、関係機関などに向けた教育・研修旅行の誘致促進、情報発信といった誘客宣伝事業なども進めた。
 事業計画によると、6年度は「ゾーン1・ガイダンスシアター」映像の字幕を見やすい位置に移動させて視認性の向上を図るほか、年4回の企画展示などを行う。教育・研修旅行、一般来館者などの誘致、国内外の関係機関との連携も継続して取り組む。
 委員の1人は、学校利用のリピート率上昇について、「高まること自体が望ましいことではなく、横への広がりが狭まっているともとらえられる。総数を見ると明らかに減少傾向であり、その中でリピート率が高いのは問題」と指摘し、説明や展示への工夫を求めた。
 また、「能登半島地震の被災地では震災の教訓が生かされておらず、自治体職員の見学が少ないのではないかと思う。自治体職員の見学を増やし、震災の教訓を伝えるためにどうしたらいいかを考えるべき」との意見も。昨年度のメモリアルセミナーで参加者から好評だった「45分で展示解説」の定例化といった必要な事業の継続、市観光物産協会が行うパークガイド事業や高田松原津波復興祈念公園全体でのさらなる連携なども求められた。