「定額減税」の実感いかに 6月開始へ気仙も準備に追われる 対象や仕組み煩雑 対応も細分化

 政府による「定額減税」が6月に始まる中、気仙の各事業者も準備に追われるほか、合わせて行われる「補足給付金」を含め、各自治体も対応を進めている。定額減税は、個人住民税所得割と所得税を対象に実施。定額減税が満額できないと見込まれる人には給付金措置も設ける。官民双方から「仕組みが煩雑」との指摘もある中、関係機関はスムーズな手続きや減税実感を得られる支給に向け模索を続ける。佐藤 壮)


 物価高対策として全国一律に行われる定額減税は、令和5年の合計所得額1805万円以下が対象。納税者本人と控除対象配偶者、扶養親族(16歳未満を含む)の合計が減税対象人数となり、大船渡市では人口約3万3000人のうち、4割超に当たる1万4300人が対象と見込まれる。
 定額減税額は、対象人数1人につき、住民税所得割分が1万円、所得税分が3万円で計4万円となる。給与から天引きされる給与特別徴収の場合は、勤務先で「特別徴収税額の決定通知書」が配布される。
 納付書か口座振替での納付による普通徴収に加え、年金から天引きされる年金特別徴収の場合は、自治体から納税通知書などを送付する。大船渡市では、6月7日(金)に送ることにしている。
 定額減税可能額が、6年度分個人住民税所得割と6年分推計所得税の合計額を上回る人は、補足給付金が支給される=図参照。市内では1100人程度と見込まれ、差額を1万円単位で支給する。
 給付金対象者のうち、マイナンバーカードで「公金受取口座」を登録している場合は、7月上旬以降に支給通知書を送付。対象者による手続きは原則不要で、支給は7月下旬以降を見込む。
 口座登録していない場合は、7月上旬以降に口座確認書を送付し、オンラインか郵送で登録が必要。完了後に順次支給する。
 渕上清市長は「事務の繁雑さは、昨今の報道でも見聞きしており、相談にはしっかりと応じられる体制をとりたい。対象となる人が給付の実感を得られるように、広報などを通じてできる限りPRしたい」と話す。
 補足給付金対象者向けに、コールセンター設置も検討するという。一方、市から電話で口座番号を確認したり、住民側に料金を請求したりすることはない。送付金を装った詐欺も考えられるため、市ホームページでも注意を促す。
 市では、令和5年度の住民税非課税約4500世帯に加え、住民税均等割のみを課税する約900世帯に対しては、1世帯あたり10万円の給付金を支給。すでに、ほぼ全ての対象世帯で手続きが完了した。少数ながら、本年度は新たに住民税非課税となる世帯と、住民税均等割のみ課税世帯への給付金を実施する。
 源泉徴収事務を取り扱う事業所には、国税庁による定額減税に関するパンフレットが送付された。定額減税では、政府が減税額を給与明細に記載するよう義務付ける中、事務やコストの負担増も懸念される。
 同じ年収層でも、扶養家族数などによって減税額は異なるため、補足給付金の対象も一律ではない。民間事業所、行政機関双方から「事務が煩雑」「一律給付金の方が楽」といった声も聞かれる。
 中小・小規模事業者の担当者も情報収集を重ねながら、正確な対応に向け準備を進める。気仙地区法人会では、来月開催の定額減税の実務と留意点に関する研修会を企画したところ、すでに定員を大きく上回る申込数に達し、関心の高さを裏付けている。