「IT活用塾」行動後押し 5年度は業務面の取組実績が倍増 今後も実情に合った課題解決策支援へ

▲ 業務活用に取り組むための成果が生まれた5年度のIT活用塾

 大船渡市は、昨年8月~今年2月に実施したIT活用課題解決型人材育成事業「IT活用塾」の取り組み実績をまとめた。個人経営者や民間企業の職員ら60人余りが参加し、業務等への活用に至った取り組みは58件と前年度比2・1倍となった。AI(人工知能)やオンラインの支援ツールを生かした業務の見直し、作業の効率化を支えた。本年度も開講する予定で、事業所など組織単位での参加も広く歓迎し、民間のデジタルトランスフォーメーションや課題解決への行動支援を見据える。(佐藤 壮)

 

 IT活用塾は、毎週水曜日夜に、盛町の市ふるさとテレワークセンターで開講。市民や市内事業所(団体を含む)経営者、従業員ら61人が参加した。参加者が自ら興味のあるIT活用テーマを決めて取り組むとともに、得られた発見・気づきを他の参加者にも共有する「オープンイノベーション形式」による学び合いが行われた。
 主な取り組みテーマのうち「ビジネスのデジタル化・デジタルトランスフォーメーション」では、参加者が業務の見直しや工程改善を行いながら、リモートワーク環境を整備。書類管理ツールを活用し、ペーパーレスをはじめ情報管理の効率化を図る動きや、電子契約サービスを活用して契約事務の電子化を進めるといった成果も見られた。
 「プログラミング・データ活用」のうち、社用車運行管理事務の効率化に向けた取り組みでは、表計算ソフトの「エクセル」で出発地と目的地を入力するのみで、ウェブ上で経路情報を取得できるようになった成果も。イベントなどの申し込みに対する内容確認メールを、自動で送信できるように整える参加者も見られた。
 「AI・支援ツール活用」では、議事録の文字起こし自動化や、業務マニュアルを〝学習〟させたうえで質問に答える「AIボット」作成といった取り組みもあった。
 こうした業務等への活用を試みた取り組みは、前年度比1・5倍増の84件。このうち、活用に至ったのは58件で、同2・1倍となった。
 5年度は、AIや支援ツール活用を取り組みのテーマに挙げる参加者が増加。個人経営者が、支援ツールを生かし、自らの事業所情報を発信するためのSNSデザインやホームページ制作に挑むなど、近年のIT活用を簡易化する技術の普及がうかがえる。
 地元在住者以外の来店、顧客の取り込みに向け、個店や商店街が積極的にSNS活用に乗り出している背景もあるという。5年度の参加者は個人経営者が約4割、職場や団体に所属する職員が約5割で、それぞれの業務で課題と感じている分野での取り組みが目立った。
 当初掲げたテーマの達成を目指すだけでなく、学び合いの中で別分野にも興味を抱き、挑戦する事例も。参加者アンケートでも「予期せぬ成功を経験した」との回答が7割を超えた。
 6年度も8月以降にIT活用塾を本格化させる方針。5年度と同様の取り組みに加え、企業や団体といった組織単位での参加・取り組みも呼び込む。人口減少に伴い、担い手不足は産業振興面でも大きな課題になりつつある中、効率化につながる民間のデジタルトランスフォーメーションの後押しを見据える。
 市産業政策室の鈴木宏延次長は、「5年度はおおむね学習効果の高い学び合いの場を提供できた。事業所の規模や業種によって課題は異なる中、ITで自社の課題を解決する行動の1歩目を後押しし、取り組めるところから取り組む環境づくりに貢献したい」と今後を見据える。