売り上げ 昨年比減7割超に 商議所会員事業所対象アンケート調査 コロナ5類移行後も物価高騰重く

 大船渡市と大船渡商工会議所が4~5月にかけて実施した同商議所会員事業所対象のアンケート調査で、昨年3月の売り上げ状況との比較で「減少」と回答した割合が7割を超えた。新型コロナウイルス5類移行後も景況は回復せず、物価高騰の影響が重荷となっている現状が浮き彫りに。4~6月の売り上げ見通しも6割超が「減少する」とし、エネルギー価格高騰に対する支援や補助金・給付金の充実を望む声が多い。(佐藤 壮)

 

 調査はコロナ禍や物価高騰などの影響が幅広い業種に及ぶ中、関係機関に対して必要な施策や要望などにつなげようと実施。令和2年度から定期的に行っている。通算16回目の調査で、本年度は物価高騰の影響を重点的に聞く内容としている。
 市内企業の影響変化を定点的に把握するため、会議所の会員事業者から業種バランスを考慮し、600事業所を選定。286件の回答があり、回収率は47・7%だった。
 調査基準日を今年3月末とし、前年同月の売り上げ状況を100とした場合の変化に関する質問=別掲参照=では「減少」が71%となった。減少幅は「5%以上」が最多の17・1%。「10%以上」は14%、「30%以上」は11・5%で、「50%以上」も9・5%に上った。
 「30%以上減」「50%以上減」と回答した割合を業種別に見ると、建設業が48・9%に達した。飲食業は33・4%、宿泊業は28・6%だった。
 一方で「増加した」と答えたのは、調査全体で14・3%。業種別では製造業、卸売業、運輸業、飲食業、農林漁業で20%以上となった。
 物価高騰について「影響を受けている」と答えたのは84・3%で、昨年12〜今年1月に実施した前回調査よりも5・7ポイント上昇。業種別では、食料品製造業と運輸業、農林漁業は100%だった。具体的には原材料・仕入れ価格や燃料価格、電気料金の各上昇に伴う利益圧迫に加え、消費の冷え込みを挙げる回答が多くを占めた。
 昨年5月に新型ウイルスが5類に移行され、コロナ禍前の生活環境に戻っている一方、物価高騰の影響が重荷となっている。令和2年以降のコロナ禍で大きく売り上げを落とした事業所が大半で、経済状況の停滞が長期化している現状が浮かび上がる。
 今年4~6月の売り上げ見通しに関しては「減少する」が61・9%を占めた。前回調査時よりも7・8ポイント増。業種別では、小売業が74・1%と最多で、次いで食料品製造業72・7%、建設業68%と続いた。
 資金繰りに関しては「現時点では問題はない」が46・5%。「借入金残高が増加」が18・2%、「新規融資を受けた(受ける予定も含む)」が15%、「新型コロナウイルス関連融資の返済が始まり負担になっている」は11・2%となった。
 必要とされる支援策に関しては、複数回答可とした=別掲参照。「エネルギー(燃料・電気・ガス)価格高騰に対する支援」と「売上減少事業者への補助金・給付金」が50%超に。エネルギーに関しては、運輸業だけを見ると83・3%に達し、食料品製造業も78・3%と高かった。
 人員の充足状況も質問(単独回答)。「過不足はない・多少不足しているが事業運営に支障はない」が61・9%で、「不足している(事業運営に支障が生じている)」が11・2%、「過剰である」が4・2%、「非常に不足している(事業継続に不安がある)」は3・1%だった。
 物価高騰の影響が住民生活や経済活動に深刻な影響を及ぼす中、市はプレミアム付商品券を発行し、地元消費を促進。今月から、政府による個人住民税所得割と所得税を対象とした定額減税も本格化する。
 個人消費の活発化が期待される一方、企業活動や住民生活では、補助金打ち切りによる電気料金上昇への懸念が広がる。人口減少による消費・需要減、公共工事減少といった構造的な課題も抱えるだけに、数年先を見据えた経済対策や、官民が連携を強めた取り組みが求められる。