サーモン 待望の初水揚げ 初年の今季150~200㌧計画 広田湾漁協とニッスイ 試験的に海面養殖し環境調査(別写真あり)

▲ 広田漁港で初水揚げされた養殖サーモン

 陸前高田市の広田湾漁協(砂田光保組合長)と水産大手の㈱ニッスイ(浜田晋吾代表取締役社長執行役員、本社・東京都)が、昨年11月から試験的に海面養殖しているサーモン(ギンザケ)の水揚げが、5日に始まった。試験1年目の今季は150~200㌧の水揚げを計画。来年秋以降の本格養殖を見据え、他の漁業活動などに影響を与えないか慎重に調査を進めていく。(高橋 信)

 

 試験養殖は、広田町の広田漁港そばの広田湾内と沖合の2カ所に円形の海面いけすを1基ずつ設置し、実施している。1匹約180㌘の稚魚は、およそ半年で2・5㌔前後に成長。この日は養殖用いけすから、岸壁沿いの海面に設けた水揚げ用のいけすにサーモンを運んだあと、約2㌧を水揚げした。
 いけすからたも網ですくい、バチバチと勢いよくはねる銀白色の成魚が揚がると、漁港はにわかに活気づいた。質を直接確かめようという地元水産加工業者らの姿も見られ、佐々木拓市長も水揚げの様子を見学した。
 今季の水揚げは今月末ごろまでを予定。市内外の工場で1次加工され、一部は市内の飲食店などに出荷される。
 深刻な不漁に陥っている本県秋サケ。県がまとめた漁獲速報によると、令和5年度漁獲量は133・6㌧(沿岸85・5㌧、河川捕獲44・8㌧、海産親魚3・3㌧)と、前年比70%減で過去最低となった。
 こうした中、注目が集まっているのが生食可能な養殖サーモン。かつて生食の需要は低かったが、今はすしネタとしても定着しており、本県を含め、不漁の秋サケを補完しようと、養殖に乗り出す動きが全国的に活発化している。
 陸前高田市でのサーモン養殖を巡っては、佐々木市長が昨年4月、ニッスイ関係者と面談した際、会社側から市内でサーモンの海面養殖ができないか提案を受け、計画が動き出した。空いていた漁場の有効活用にもつながることなどから、同社と漁協との交渉も順調に進み、同年8月、事業を試験的に実施することが決まった。
 広田漁港で周辺の海洋環境や他の漁業活動への影響がないか試験養殖を継続し、調査が順調に進めば来年秋にも本格的な養殖事業へと移行したい考え。将来的には年間3000㌧程度の生産を見込んでいる。
 佐々木市長は「計画通り初水揚げを迎え、安どした。現段階で最も重要なことは、環境に影響がないかしっかりと証明すること。自動給餌システムをはじめ、環境に十分に配慮した先進的な技術を導入しており、今後も試験が順調に進むことを願う。本格操業したら、サーモンが陸前高田の新たな名物となるようPRしていく」と話した。