「脱炭素先行地域」目指す ソーラーシェアリング大規模導入構想 市が概要案まとめる

▲ 気仙町のワタミオーガニックランド内に整備されているソーラーシェアリング

今月申請 9月頃選定結果公表へ

 

 陸前高田市は、環境省の「脱炭素先行地域」選定を目指し、脱炭素化の事業を盛り込む計画の概要案をまとめた。採択されれば国からの手厚い財政支援を受けながら、独自の取り組みを展開でき、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)などを大規模に導入していく構想。同省は令和7年度までに少なくとも100カ所の先行地域を選定することとしており、すでに県内3自治体を含む全国の73地域が選ばれている。今回の募集期間は17日(月)~28日(金)で、9月頃に選定結果が公表される見通し。市はこれまでに2度申請するも先行地域から漏れており、「三度目の正直」となるか行方に注目だ。(高橋 信)

 

 脱炭素先行地域は、令和12年度までに家庭などでの電力消費に伴う二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロを目指す全国のモデル的地域を指す。計画の概要案は、4日に市役所で開かれた市循環型地域づくり推進協議会(会長・佐々木拓市長)で示され、委員らがその内容を審議した。
 概要案によると、市内電力需要の約2割を占める中心市街地エリアの遊休地を活用し、農業と太陽光発電を同時に行う「ソーラーシェアリング」を大規模導入する。
 ソーラーシェアリングは、気仙町の農業テーマパーク「ワタミオーガニックランド」が市内で唯一導入している。同ランドは用地全体に土を敷く露地栽培ではなく、ブドウの木をポットで育てる「根域制限栽培」で営農に適さない場所での果樹栽培を実現しており、この手法を参考にした取り組みを通じ、脱炭素と同時に東日本大震災の被災跡地などの有効活用を図っていく。
 また、人材不足が顕在化している電気主任技術者の養成にも乗り出す。同技術者は工場やビルなどの電気設備に関する保安監督者として従事できる国家資格。新たに50人程度の人材を創出し、多様な再エネ導入に向けたボトルネック解消に努める。
 横田地区では、太陽光発電などの再エネと蓄電池を組み合わせることで、地区内の電力需要を賄うシステム「地域マイクログリッド」を導入する。電力会社からの電気が途絶えても、独自に電気を供給できることから災害時にも生きる仕組み。同地区では小水力発電も取り入れる。
 市内の集客施設には、電気自動車(EV)の充電施設を設置する。中心市街地に建設される計画のビジネスホテルに薪ボイラーを設け、間伐材、林地残材の活用を推進する。市内を走行している環境に配慮した電動車(グリーンスローモビリティ)の車両も5台追加する。
 環境省によると、脱炭素先行地域の募集はこれまでに4回行い、計74地域(第1回26地域、第2回20地域、第3回16地域、第4回12地域)を選定。取り組みに対して5年間で最大50億円の交付金を受けられる。
 しかし、1地域が今年、事業の遅れから先行地域を辞退しており、採択された地域による取り組みの実現可能性も問われている。本県では久慈市、宮古市、紫波町が選定されており、陸前高田市がモデル地域に加わるか注目される。
 次回の協議会は10月を予定。その時期には先行地域採択の可否が示されている見通しで、それを踏まえて今後の展開を検討していく。
 佐々木市長は「震災からの復旧・復興事業が進展し、これからのまちづくりを考える中で脱炭素、SDGsの推進、循環型の地域づくりはキーワードとなる。まちづくりに必要な事業を盛り込む計画としたい」と話す。

 

20日に電気主任技術者の業務学ぶ講習

 

 陸前高田市の地域電力会社・陸前高田しみんエネルギー㈱(小出浩平代表取締役社長)は20日(木)午後6時30分~8時、高田町の奇跡の一本松ホールで電気主任技術者の業務内容などについて学ぶ講習会を開く。参加無料。
 市が共催。講師は、電力系ユーチューバーなどとして活動する伊藤菜々さん。オンラインで講話する。電気主任技術者は、電気設備の安全性を担う国家資格で、人材不足が大きな課題となっている。
 同社は「地元で働きたい人や安定した収入がほしい人などにぜひ参加してもらいたい」と呼びかける。
 事前申し込みが必要で、13日(木)締め切り。申し込みはインターネットフォーム(別掲QRコード)や電話で受け付ける。
 問い合わせは同社(℡47・4102)へ。