アカツクシガモ県内初確認 オス1羽 学芸員・金野さんが発見
令和6年6月8日付 7面
陸前高田市小友町で5月、県内で観察の記録がないアカツクシガモが確認された。東日本大震災で被災した文化財資料の安定化処理に取り組む同市の㈱共立ソリューションズ(本社・東京都)陸前高田営業所の学芸員・金野悠さん(40)が発見した。同市では今年1~4月にも県内で確認例のない冬鳥1羽が飛来しており、関係者は「県内初の野鳥が2羽続いた」と驚いている。(高橋 信)
陸前高田市立博物館によると、アカツクシガモは雑食性の大型のカモ。ユーラシア大陸で繁殖し、日本では西日本で観察の記録が多いとされる。ほぼ全身が橙褐色で、頭部は淡色なのが特徴という。
金野さんが発見したのは5月25日。午後1時すぎ、小友町の小友浦干拓跡地付近で、緑藻などの餌を食べている成鳥1羽を確認し、カメラで撮影。その後、市立博物館の浅川崇典学芸員にも撮影を依頼した。首に黒い首輪のような模様がある特徴からオスとみられる。
アカツクシガモはその後、水たまりにくちばしを突っ込んだり、近くの水田で羽繕いをしたりして、午後4時40分ごろに飛び去った。それ以降、市内では確認されていない。
同館は県立博物館、日本野鳥の会県内支部に照会。県内における観察記録がないことが分かった。
もともと自然史系に関心があったという金野さん。5年ほど前から博物館などが所蔵する被災文化財の安定化処理業務に従事し、地元資料の重要性を再認識した。
「自分なりに博物館に貢献しよう」と昆虫標本の作製や野鳥の観察にも情熱を注ぐように。「チョウと違い、気味が悪いと思っていたガも観察すると、きれいで魅力的。鳥は博物館の学芸員からいろいろ教わり、生態の奥深さに感動した」といい、昆虫採集やバードウオッチングがライフワークとなった。
そうした中で、県内初とされるアカツクシガモと遭遇し、「とてもうれしかった」と目を輝かせる。「生き物を追うきっかけをつくった今の仕事に巡り合えて、大変感謝している。地元の子どもたちにも博物館に行ったり、外で観察したりしてさまざまな生物に親しんでほしい」と願いを込める。
同市では1~4月、県内初とみられる冬鳥のホシムクドリ1羽が確認された。博物館では今月末まで、1階の回廊で野鳥の写真展を開催しており、今後アカツクシガモの写真も展示する予定。16日(日)午後2時には同展のギャラリートークが開かれる。