特定空き家 初認定へ 高田町の全焼家屋1棟 市が解体工事方針 あす開会の6月議会に関連費提出の見込み
令和6年6月13日付 1面
陸前高田市は、火事で全焼したあと空き家化した高田町の民家1棟について、放置すれば倒壊などの危険がある「特定空き家」に認定する手続きを進めており、空家等対策特別措置法に基づく略式代執行により、除却(解体)する方針を固めたことが分かった。認定されれば市内初の事例で、略式代執行も初めて。市は14日(金)に開会する市議会定例会に関連経費を盛り込んだ本年度一般会計補正予算案を提出する見通し。可決されれば夏~秋ごろにも解体工事に入るとみられる。(高橋 信)
特定空き家としての認定手続きを進めているのは、高田町鳴石にある木造2階建ての住家。昨年12月の火事で全焼し、この家に住んでいた当時50代と60代の兄弟2人が亡くなった。
今月3日に開かれた市消防委員会の会合で、佐々木拓市長が委員からの質問に答える中で、この民家の対応について言及。「除却をする方向でいきたいと思っている」と述べた。
行政代執行は所有者らに代わって行政が強制的に行う措置だが、略式代執行は所有者などが確知できない場合に行政が講じるもの。
民家は住宅街にあり、通学路にも面している。そのまま放置すれば保安上の危険や衛生上の有害となる可能性があり、関係者によると、全焼後、近隣住民などから市に対し、必要な対応を求める要望があったという。
市は現地調査などをし、市空家等対策協議会(会長・佐々木市長、委員10人)から意見を聞いたうえ、特定空き家と判断。所有者がいないため、改善を促す行政指導や勧告・命令ができず、法定相続人も不明であることから、略式代執行に踏み切るとみられる。
平成26年に成立した「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、特定空き家に認定された空き家について、行政による▽助言・指導▽勧告▽命令▽代執行——の手だてが整えられた。住宅用地の固定資産税は最大で6分の1に軽減されるが、特定空き家の所有者が行政からの適切な管理や修繕の要求に応じなかった場合は減税の対象から除外される。
また、昨年12月の法改正で、特定空き家の前段階にある空き家対策を強化しようと、新たに「管理不全空き家」を創設。その空き家に関しても勧告を受けた場合、特定空き家と同様に、住宅用地にかかる固定資産税の特例措置の対象外となることとなった。
市は法改正などを踏まえ、昨年度末、市全域の空き家を対象とする「市空家等対策計画兼空き家対策総合実施計画」を策定。特定空き家、管理不全空き家の定義・判断基準、それらの空き家に対する措置の流れを明記している。
計画期間は本年度から令和15年度までの10年間で、対策に取り組むための基本方針は▽適切な管理の促進▽利活用の促進▽管理不全な空き家などの解消──の3点としている。特定空き家などの所有者による自主的な改善を後押しするため、助成制度創設を予定している。
計画期間中の除却目標は、20棟と定めている。このうち、市が担う数は計画上5棟を見込んでいる。