「自動車避難」あり方検討 犠牲者ゼロへ来月から津波対策会議 地域ワークショップも計画

▲ 東日本大震災直後のリアスホール前交差点。自動車避難のあり方を巡っては、渋滞を避ける対策も鍵に(平成23年3月11日午後3時25分撮影)

 大船渡市は来月、津波災害時の自動車避難や観光客、事業従事者らの避難対策などを盛り込んだ行動方針の取りまとめに向け、各種団体関係者による検討会議を設ける。従来通り「原則徒歩避難」を堅持する一方、自動車を使用する場合の渋滞防止など、現状課題を洗い出しながら議論を進める方針。浸水想定エリアでのワークショップも交え、地域の実情に合った対策を取りまとめる。(佐藤 壮)


 検討会議は、避難行動の迅速化などによる津波災害時の「犠牲者ゼロ」に向け、地域の実情に合わせた対策の検討を進め、行動方針を示すのが目的。メンバーは、岩手県立大学(防災復興支援センター)、国土交通省南三陸沿岸国道事務所、県大船渡土木センター、大船渡警察署、地区公民館連絡協議会、商議所、市社協、市観光物産協、防災士、大船渡消防署、市関係部署の各関係者で構成する。
 現段階で検討事項は▽津波災害時における自動車避難の課題抽出▽自動車避難のあり方の検討(避難行動要支援者の避難を含む)▽事業従事者の避難対策の検討▽観光客等の地理不案内者の避難対策の検討▽避難行動方針の取りまとめ──を挙げる。
 初回の会議は、7月9日(火)に予定。検討内容の共有や、各種課題に関する意見交換を予定している。
 2回目は10月、3回目は来年2月に開催し、方針作りを進める。9月下旬~10月にかけての地域ワークショップでは、平成31年に作成された津波避難マップなどをもとにしながら、警報・注意報発令時の避難のあり方を改めて考えるとともに、自動車使用のあり方も探ることにしている。
 県は令和4年3月、最大クラスの津波浸水想定を発表。同年9月公表の「岩手県地震・津波被害想定調査報告書」では、市内で最大400人の犠牲者が出るとされたが、避難行動の迅速化等を図ることで、犠牲者ゼロが可能としている。
 県と沿岸市町村は、共通課題と具体的な減災対策を検討し、昨年8月には県地震・津波減災対策検討会議報告書を取りまとめ、自動車避難の検討に係る留意点等が示された。今回の検討会議は、こうした報告書の内容を踏まえて議論を進めることにしている。
 津波防災においては、市は「原則徒歩避難」とし、自動車避難に関しては「検討する」にとどまっていた。市内では、交通量が多い国道や県道を横断して避難所に向かうケースが多い。13年前の東日本大震災では、各地で渋滞が発生したほか、停電の影響で作動しない信号機も相次いだ。
 市は発災翌年9月に、避難行動や防災意識に関する市民アンケートを実施。「最初に避難した場所までは、どのような方法で避難したか」の問いには、車が49%で、徒歩の47%を上回った。
 徒歩避難者のうち、59%が10分以内で避難を完了。一方、車での避難者は45%にとどまった。避難場所まで距離がある場合、車を選択する人が多いことが要因の一つである一方、渋滞や信号機故障による影響も大きかったと推定される。
 検討会議では、大船渡町のキャッセン大船渡などに訪れた外国人を含む観光客や宿泊客をはじめ、地元在住者以外もスムーズに避難できる体制も探る方針。各種計画や避難マップなどに反映させたい考えも示す。
 市防災管理室では「会議を通じて、原則徒歩避難は堅持しながらも、どういった方が自動車避難に該当するかといった点などを〝深掘り〟できれば。ワークショップで、地域の実情を把握し、方針作りではできるだけ分かりやすい表現を目指したい」としている。