三鉄綾里駅併設の旧物産観光センター 本年度中に解体方針 跡地利活用〝トレイル視点〟でも注目

▲ 本年度に解体される計画の旧綾里物産観光センター

 大船渡市は本年度、三陸鉄道綾里駅に併設している旧綾里物産観光センターを解体する。昨年3月で切符販売や売店などの業務が終了し、閉鎖が続いていた。19日の市議会定例会一般質問で当局は、跡地にはトイレを移転改築するほか、身体障害者用などの駐車場を設ける方針を示した。綾里駅は近年、みちのく潮風トレイルで綾里地区を巡る拠点の一つとなっている中、利便性向上を含めた今後の利活用策が注目される。(佐藤 壮、2面に一般質問の主なやりとり)

 

 綾里駅は、昭和48年に日本国有鉄道の無人駅として開設。昭和59年から三鉄南リアス線の駅となり、綾里駅舎の機能を有していた綾里地区生産物直売所は、同63年から綾里地区直売所運営協会が実施主体となって乗車券・売店販売を始めた。
 平成16年に三陸町観光協会が大船渡市観光物産協会に編入合併。同21年から、綾里物産観光センターも同協会が指定管理者となった。
 同23年の東日本大震災で職員を解雇したが、同年7月に再開。観光案内や観光情報の発信、物産振興などの拠点としての機能を維持し、三陸鉄道利用促進のため乗車券販売などを担ってきた。売店スペースには食品や生活雑貨、園芸用品、三鉄グッズなどを並べ、住民らの交流も支えた。
 しかし、施設利用者の減少傾向に伴って売り上げが低調となり、不採算状態が続いた。このため、昨年3月末に業務を終了。その後は閉鎖が続き、鉄道利用者は施設脇を回ってホームに入る流れとなっている。
 市は6年度一般会計予算に、解体費用として2871万円を計上。さらにトイレ整備予算も盛り込んだ。解体方針は、19日に開かれた大船渡市議会6月定例会一般質問で西風雅史議員(新政同友会)が取り上げ、今後の対応などを追及した。
 冨澤武弥商工港湾部長は「建物の存続の可能性を調査・検討した結果、老朽化に加え、基礎部分にシロアリ被害が確認された」と答弁。6年度中の解体方針を示した。
 今後は建物がある部分を平場にして、舗装する計画。移転改築する三鉄綾里駅のトイレや、新たな駐車スペースなどを設ける。これまでと同様、津波災害時の第一避難場所としての空間に加え、必要に応じて催事等のスペースとしても活用できるよう、綾里地区公民館と協議を重ねる。トイレは、オストメイトにも配慮した多機能型とする。
 同駅は、みちのく潮風トレイルのハイカーが訪れる観光コースの経由地になっている現状にも言及。「駅ホームに隣接した場所であり、周辺でイベントを行う際には、三陸鉄道と協議を行うなど関係団体と調整を図りながら対応したい。跡地活用は、引き続き地区公民館とコミュニケーションを深め、トレイルの中心地である綾里駅や、観光客にとって良好な環境となるよう取り組む」とも語った。
 西風議員は「住民からは『あずまや程度があってもいいのでは』といった声もある。こうした希望にどう対応するか」と再質問。大和田達也企業立地港湾課長は「構築物に関しては、ホームとの距離確保といった問題があるが、相談などには対応していきたい」と述べた。
 綾里駅の近くには「綾里大権現」が格納されているほか、宮野貝塚に関する説明看板もある。みちのく潮風トレイルを巡っては、綾里地区でも、駅を拠点に綾里街道の一部や綾里川沿いなどを巡り、自然文化に親しむイベント企画などが好評を博している。