三陸町・吉浜海水浴場「再開のめど立たない」 対応続くも震災以前の環境戻らず

▲ 海水浴場としての早期機能復旧が待たれる吉浜海岸

 大船渡市は、20日に行われた市議会6月定例会の一般質問で、三陸町吉浜の吉浜海水浴場について「再開のめどは立っていない」とし、今夏の開設も難しい見通しを示した。石の露出や13年前の東日本大震災で損傷した防潮堤由来のコンクリートがれきなどが確認され、県や市は対応を重ねるが、波打ち際の安全確保には困難な状況が続く。一方、砂浜を生かした地域団体の取り組みに協力するなど、現状を踏まえた利活用も探ることにしている。(佐藤 壮、2面に一般質問の主なやり取り)

 

 吉浜海岸の現状は、小松則也議員(新政同友会)が取り上げた。「暑い夏がそこまできているが『吉浜は今年も海開きができないんだな』という嘆きの声が聞こえる」と発言。海岸で実施している県のがれき撤去作業など〝本気度〟には理解を示しながら、今後の見通しをただした。
 渕上清市長は「砂の流出による石の露出や、損壊した防潮堤由来のコンクリートがれきが確認されるなど、海水浴場としての安全確保が困難な状況が続いている」と説明。本年度も、海中の状況調査や県要望など、これまでと同様の取り組みを展開する方針を示した。
 冨澤武弥商工港湾部長は、急傾斜となっている波打ち際の現状や、吉浜川からの落ち葉流入による視界不良にも言及。「これまでも早期復旧や活用を願う声が多数寄せられている。海水浴場として開設できる状態が望ましい。今のところ再開のめどは立っていないが、本年度においても県とともに所用の整備を進める」と述べた。
 吉浜地区では4月、住民自治組織の吉浜まちづくり振興会(新沼秀人会長)が発足。同議員は、振興会が吉浜海岸を生かした活動を掲げ、7月に海岸清掃や〝宝探し〟を計画している動きにも触れながら、利活用のあり方を迫った。古内弘一観光交流推進室次長は「可能な限り協力し、意見を聞きながら、今後の利活用に生かしたい」と答えた。
 市が管轄する海水浴場は、三陸町の綾里、越喜来浪板、吉浜の3カ所。いずれも東日本大震災の津波で甚大な被害を受け、平成23年度以降は開設を見送り、関係機関と連携して防潮堤等の復旧・復興工事、海底がれきの撤去などの安全対策を進めた。
 吉浜は県内外から多くの海水浴が訪れる市の代表的な海水浴場として知られ、震災前年の平成22年には入込数が1万人を超えていた。震災後、がれきなどを撤去し、平成30年度には遊泳区域を制限したうえで開設。しかし、翌年以降も石の露出や新たな海中がれきの確認があり、元年度以降は開設見合わせが続く。コロナ禍を経て、令和4、5年度は綾里と越喜来浪板の2カ所は開設された。
 吉浜海岸を巡っては、市は復興交付金の活用による砂浜の災害復旧を検討した時期もあった。しかし、県管理の農地海岸となっており、交付金は管理者の執行でなければ認められず、事業実施に至らなかった。
 こうした中で「誰でも安全に遊泳できるよう、早期復旧を」として、昨年度も対県要望に盛り込んだ。県側からは「継続して吉浜海岸の海中がれき撤去や深浅(海中)の測量調査を実施予定」といった回答を得た。市は本年度も引き続き対県要望の一つとし、早期改善を求める。