吉田家文書 観光資源に 来年5月開館の旧吉田家住宅主屋で公開へ 市議会一般質問で当局答弁

▲ 来年5月の一般公開を見込む旧吉田家住宅主屋(昨年11月時点)。吉田家文書の内容を閲覧できるようにする

 陸前高田市議会定例会は21日、通告に基づく一般質問が行われ、市当局は東日本大震災で被災し、安定化処理を経てよみがえった県指定有形文化財「吉田家文書」の活用策を示した。現在復旧中で、来年5月の開館を予定する気仙町今泉地区の県指定有形文化財「旧吉田家住宅主屋」に、吉田家文書の内容を閲覧できる端末を置く構想。完成後の主屋について、当局は文化庁の日本遺産「みちのくGOLD浪漫」の構成文化財への追加認定を目指している。13年前の災禍を乗り越え、地域の歴史を現代に伝える貴重な資料や建造物を観光資源としても活用していく。(高橋 信、2面に一般質問の主なやり取り)


 吉田家文書の活用策は、中野貴徳議員(無所属)が取り上げた。「間もなく本体、外構などが完成する旧吉田家住宅主屋と切っても切り離せない古文書。魅力的な観光資源の一つとして活用するべきでは」と当局の考えを尋ねた。
 吉田家は江戸時代に仙台藩の旧気仙郡(陸前高田市、住田町、大船渡市、釜石市唐丹)24カ村を統治する地方役人の最上位職「大肝入」を代々世襲し、郡政の中心的な役割を果たしてきた。
 約120年間にわたる大肝入としての執務記録「定留」や「永留」、村絵図などはほぼ完全な形で保存され、平成7年、「吉田家文書」として県指定有形文化財に指定された。震災の津波で被災したが、文化財レスキューを経て修復に至った。現在は、矢作町の市立博物館生出収蔵庫に保管されている。
 修復と並行し、地元の陸前高田古文書研究会が解読作業を進め、令和4年度におおむね完了。5年度から大学教授などの専門家に監修を依頼している。
 当時の気仙郡の出来事が詳細に記録されている重要な歴史資料であることから、旧吉田家住宅主屋敷地内の管理棟に端末を置き、内容を閲覧できるようにする。全国の研究者にも参考にしてもらうため、申請があれば写しの交付も行うこととしている。
 今泉地区の吉田家住宅は、享和2(1802)年に建築され、藩政期を物語る遺構として、平成18年9月、主屋、土蔵、味噌蔵、納屋(長屋)の1件4棟が県指定有形文化財(建築物)に指定された。震災で流失し、部材の残存率などを踏まえ、30年12月、主屋1棟のみを県の文化財として指定継続することが決まり、名称も「旧吉田家住宅主屋」に変更された。
 世界的に類のない津波被害を受けた木造文化財の現地での復旧は、令和3年度に本格化。7年3月の完成、同年5月の一般公開を予定している。完成後、みちのくGOLD浪漫への追加申請に向け、関係機関と協議を進めている。
 村上知幸地域振興部次長は「吉田家文書は市民はもとより、全国の研究者にもその内容を公開する。旧吉田家住宅主屋を含めて重要なコンテンツと捉えていることから、観光客誘致に向けた活用を図っていきたい」と述べた。