違法漁業対策のヒントに アフリカの国家公務員ら JICAの研修で気仙訪問(別写真あり)

▲ 大船渡市魚市場の場内を見学する研修参加者ら

 違法漁業対策などに携わるアフリカの行政関係機関職員らが18~21日の4日間、本県で研修を行った。21日には、気仙両市の水産施設などを訪れ、現地の漁業、水産関係者から漁獲における規則や資源管理について話を聞き、自国での取り組みのヒントとした。
 この取り組みは、国際協力機構(JICA)による課題別研修の一環。日本が持つ知識や経験を生かし、発展途上国が抱える課題解決につなげようとのもので、保健医療や情報通信技術、教育、自然環境保全、防災など、幅広い分野で行われている。
 今回は「違法・無報告・無規制(IUU)漁業の抑止にかかる政策・対策」(農業開発分野)の研修を本県で実施することとなり、JICA横浜センターが担当。コンゴ共和国、コートジボワール、ジブチ、ギニア、マダガスカルのアフリカ5カ国で、漁業の管理や監視に携わる国家公務員5人が参加した。
 IUU漁業とは、違法、無報告、無規制で行われている漁を指し、密漁のほか、漁獲量の過少報告や不正確な報告、操業の届け出がない漁船による漁業なども含む。国連食糧農業機関のまとめでは、世界の漁獲高の15%以上がIUU漁業に関係している可能性があり、取り締まり体制が脆弱な途上国などにおける被害は計り知れないという。
 研修では、日本および自国のIUU漁業の現状と、日本の法規則、取り締まり手法、関係機関の連携体制を理解することを到達目標に設定。一行は、18日に県漁連、19日に宮古市魚市場と三陸やまだ漁協、20日に岩手大学釜石キャンパスなどを訪れ、密漁対策や監視船による取り締まり、資源管理の取り組みを学習した。
 21日は、大船渡市魚市場と末崎町の県栽培漁業協会、陸前高田市のノリ養殖施設、東日本大震災津波伝承館、同市立博物館などを回った。
 このうち、大船渡市魚市場では、市水産課の鈴木雅博課長補佐と日野雅貴漁政係長の案内で場内を見学。水揚げの様子をはじめ、鮮度、衛生管理の手法やITを活用した電子入札システムなど、業務効率化を図りながら海産物を供給する施設の特徴に理解を深めた。
 後半は、同魚市場を運営する大船渡魚市場㈱の佐藤光男専務も交え、市場の管理運営におけるICT活用や、日本で用いられている水産物の漁獲、陸揚げの情報を提供する情報システム「CALDAP(カルダップ)」について説明を受けた。佐藤専務は「大船渡の魚市場は全国の漁船を受け入れることができるが、全国各地に足を運んで船主と会ったり、船を見たりして、漁船誘致の取り組みも行っている」とし、漁船と水揚げ施設の信頼構築の大切さを伝えた。
 参加したコンゴのウワテ・ダビィ・ジャックソンさんは「皆さんが厳密な体制で仕事をしていると知り、素晴らしいと思った。ぜひ参考にしたい」と話していた。