ククマ目撃多発 不安広がる 猪川、立根両町の境で 日ごとに大胆さ増す行動
令和6年6月26日付 7面

大船渡市の猪川、立根両町の町境で、17日からクマの目撃情報が相次いでいる。周辺には福祉施設や学校が多いうえ、日ごとに大胆さを増すクマの行動に、住民の間で不安が広がっている。(齊藤 拓)

クマは祥風苑の壁をよじ登り、屋根を越えていった
クマが目撃されている現場は、猪川町字冨岡の特別養護老人ホーム・富美岡荘と、立根町字田ノ上の県立福祉の里センターの付近。
市農林課によると、同所でのクマ目撃情報が、17~24日にかけて計12件寄せられた。被害は確認されていない。
多く目撃されているクマは体長約1㍍で、同一個体かどうかは判明していない。市農林課は「大きさは成獣と子グマの中間で、現場から山に戻れない可能性もある」と話している。
23日午前11時頃には、富美岡荘と同じく社会福祉法人成仁会(山崎和彦理事長)が運営する、猪川町の養護(盲)老人ホーム・祥風苑の玄関付近にも出没。同苑の壁をよじ登り屋根を越えていくなど、大胆な行動が徐々に目立ち始めた。
この日は同時に成獣のクマが目撃された情報も寄せられており、市農林課は「少なくとも2頭のクマがいるのではないか」としている。
成仁会の各施設では、追い払いのため2時間に1度爆竹を鳴らしたり、各施設の自動ドアの電源を切って来客のつど手動で開けたりと、職員らが対応に追われている。
祥風苑の崎山美知枝施設長は「この施設を利用するのは目が不自由な人なので、クマがいたとしても気づけない。屋外の行事も今はできないし、朝に中庭を散歩する利用者にも屋内にいてもらっている」と不安を隠せないでいる。
目撃情報を受け、大船渡警察署が現場で警戒を行っているほか、市農林課も花火の使用とパトロールを継続。目撃情報や痕跡のあった場所に箱わなを2台設置しているが、捕獲には至っていない。
現場周辺には雑草の生い茂る林が多く、空き家もある。現場周辺の福祉施設に勤務する住民は「草刈りがされておらず、山とそうでない場所との違いが分からなくなっているし、空き家で野生動物が雨宿りしていた日もある。クマにとってすみ着きやすいのでは」と危機感を抱く。
県は4月、県全域に「ツキノワグマの出没に関する注意報」を発表。▽廃棄野菜、生ごみ、コンポストの管理を適切に行う▽農地周辺のやぶを刈り払い見通しを良くする▽屋外やクマが侵入できる納屋に果物、穀物、ペットフード等を保管しない──などの対策を呼びかけている。