「モビタ」活用し外出促進を 一般社団法人が8月から実験 公営住宅4団地とアバッセ間運行

▲ 8月にモビタを活用した新たな実証実験が始まる

 陸前高田市内で環境に優しい電動バスのグリーンスローモビリティ「モビタ」を運行している同市の一般社団法人陸前高田グリーンスローモビリティ(小出浩平代表理事)は、市が手掛ける高齢者向け買い物支援事業「スローショッピング」の移動手段としてモビタを活用する実証実験を行う。8~12月に週1回、市内4カ所の災害公営住宅と、同ショッピング実施場所である高田町の商業施設「アバッセたかた」を結ぶバスを週替わりのルートで運行する計画。高齢者の外出促進に向け、「福祉」と「交通」両面をサポートする取り組みとして課題を探る。(高橋 信)

 

 実証実験の概要は、26日に市内で開かれた市地域公共交通会議で示された。国交省の「共創・MaaS実証プロジェクト」の採択を受けて実施する。
 計画によると運行日は毎週木曜日で、▽県営栃ヶ沢アパート▽下和野団地▽中田団地▽今泉団地──の4カ所とアバッセたかたを結ぶ。ルートは週替わりのため、1団地につきおおむね月1回の運行となる。
 運賃は1乗車100円。運行本数は1日4便で、団地発の「行き」が正午ごろ~午後1時30分ごろに2便、アバッセたかた発の「帰り」が午後2時30分ごろ~3時30分ごろに2便ずつのダイヤを想定している。
 スローショッピングは、見守りボランティア(パートナー)に付き添ってもらいながら、ゆっくりと買い物を楽しめる場を創出・提供することで、閉じこもりがちな高齢者の外出を促そうと、市が令和3年度に始めた。毎週木曜日にアバッセたかたで実施し、パートナーや参加者がくつろぎながら情報交換するサロンも開設している。
 参加者から好評の声を集める一方、交通手段がないことなどから利用者数が伸び悩んでおり、こうした課題を踏まえ、今回、関係機関が連携し、モビタを生かした実証実験に乗り出すことを決めた。
 実験では、観光・まちづくり分野でもモビタを活用しようと、休日便の乗客に市内商業施設などで使える特典付き乗車パスを配布する。同市の課題である通過型観光からの脱却に向け、乗客の市内滞在時間や観光消費額に関して調査する。
 グリーンスローモビリティは、時速20㌔未満で公道を走行可能な電動車を活用した小さな移動サービスを指す。市は高齢者の孤立防止、集客施設から中心市街地への観光誘客の促進を目的に導入を検討し、車両2台を購入。陸前高田グリーンスローモビリティが、市から車両の無償貸与を受け、4年度から運行している。
 平日は公営住宅2団地と商業施設などを結ぶルートで運行。休日は観光客向けに、道の駅高田松原やアバッセたかたなどを巡っている。乗客数は4、5年度ともに年間4000人を超える。脱炭素に貢献する交通手段として評価を受け、陸前高田グリーンスローモビリティと市は5月、「EST交通環境大賞(EST普及推進委員会など主催)」の環境大臣賞を受賞した。