末崎でもデマンド交通 10月から実証試験 地区内の碁石線バスは廃止 地域公共交通会議で承認

▲ 末崎地区内を運行する「碁石線」。デマンド交通導入により、地区内でのバス運行は廃止となる

 大船渡市地域公共交通会議(会長・宇佐美誠史県立大学総合政策学部准教授、委員30人)は26日、盛町のカメリアホールで開かれ、予約型の乗り合いタクシーであるデマンド交通の実証試験を10月から末崎地区で実施する計画を承認した。日頃市、三陸町越喜来に続き3地区目。一方、利用が低調な岩手県交通㈱運行のバス路線・碁石線のうち、末崎地区内の運行は廃止となる。今後は住民だけでなく、碁石海岸を訪れる観光客の利便性確保に向けた工夫・調整が鍵となりそうだ。(佐藤 壮)

 

観光客の利便性確保など鍵に

 

 同会議は交通、行政、各種団体の代表者らで構成し、代理を含め25人が出席。新任期では初開催で、会長に宇佐美准教授を再選した。
 議案は▽地域公共交通確保維持事業▽地域公共交通調査事業(地域公共交通計画策定事業)▽末崎地区デマンド交通実証試験▽同地区の路線バス(碁石線)の見直し▽越喜来地区デマンド交通の本格運行▽同地区と日頃市地区のデマンド交通運行内容見直し——で、原案通り承認された。
 地域公共交通確保維持事業は現在、国庫補助メニューの一つである地域内フィーダー系統確保維持費国庫補助金を活用しながら、移動手段確保に努めている。昨年、市が計画認定を受けた地域内フィーダー系統確保維持計画では、市が認定審査を行い、交付申請は補助対象事業者の岩手県交通㈱が行ってきた。地域交通法などの改正を受け、今年10月以降の運行からは、同会議が担うことになった。
 運行存続路線は、碁石線と立根田谷線、綾里外口線の3路線。このうち、碁石線は末崎町内の碁石海岸~丸森間を廃止し、大船渡町以北の丸森~立根は残す。補助外路線の「丸森立根線」と統合し、10月以降は「碁石線」の名称も消える。統合により、丸森立根線のフィーダー補助認定申請を進めることにしている。
 デマンド交通に関しては、末崎地区では一昨年12月29日をもって県交通運行の「細浦経由高田線(陸前高田市・竹駒駅~立根)」が廃止されたことを受け、地域住民の移動需要に合った交通サービス維持に向け、地域と話し合いを重ねきた。代替交通としてデマンド交通を導入することで合意を得たという。
 日頃市、越喜来と同様に、利用者の自宅などと目的地間の運行となる。利用者は事前に登録し、乗車前日までに予約センターに申し込む。午前の便は前日午後5時まで、午後の便利用時は当日午前11時まで対応。1回当たりの運賃は末崎地区内は500円。同地区からマイヤ大船渡店(大船渡町)に向かう場合は1500円、大船渡病院(同)と市役所(盛町)、盛駅は2000円となる。
 障がい者や通学利用はそれぞれ運賃を5割引きとする。一般住民らが2人以上で乗り合いとする場合は、2割引きを適用する。
 10月1日開始を予定し、土曜日と日曜日、祝祭日、年末年始は運休。現段階では、運行ダイヤは末崎地区発が午前6時45分、同8時30分、同10時、午後1時30分の全4便。大船渡地区・盛地区発(末崎地区内含む)は正午、午後3時、同6時となる。デマンド交通導入により、10月からは末崎地区住民のタクシーチケットの利用はできなくなる。
 碁石海岸~立根を結ぶ県交通バスの碁石線は、BRTと路線が一部重複していることや、利用の低調、市の財政負担が増加している状況を受け、デマンド交通導入と並行して運行内容の見直しを検討。地域の合意を得たことから、碁石海岸~丸森の区間を廃止する。これにより、末崎地区で乗降できる県交通運行の路線バスはなくなる。
 委員からは「市を代表する観光地である碁石海岸にバスが行かなくなる」といった声も出た。関係者によると、通年として碁石線の観光客・旅行者利用は少ないが、5月の碁石観光まつりといったイベント開催時は、宿泊先などからの同線利用があるという。
 市側は「前日予約となるが、観光客のデマンド交通利用も可能。デマンド交通やタクシーの案内をBRTの駅などに掲示し、なるべく利用しやすい環境を整えたい」と説明。デマンド交通では、観光客が碁石海岸インフォメーションセンターから、地区内のJR大船渡線BRT駅までの利用も可能という。一方、タクシー台数の確保を懸念する声も寄せられた。