陛下のお言葉 市民感激 奇跡の一本松に触れる 英国王主催の晩餐会スピーチで

▲ 昨年6月の全国植樹祭前日、視察先の高田松原津波復興祈念公園で佐々木市長(手前)とあいさつを交わされる天皇皇后両陛下

 英国ロンドンのバッキンガム宮殿で25日夜(日本時間26日午前)に開かれたチャールズ国王夫妻主催の晩餐会に臨まれた天皇陛下が、スピーチの中で東日本大震災や陸前高田市の奇跡の一本松に触れられ、同市の関係者が感激している。佐々木拓市長は「高田松原、奇跡の一本松のご発言に胸がいっぱい」と、NPO法人高田松原を守る会顧問の鈴木善久さん(79)=米崎町=は「とても温かな気持ちで、言葉にならない」と感謝している。(高橋 信)


 天皇皇后両陛下は、22~28日に国賓として訪英された。天皇陛下は晩餐会でのスピーチの中で、英国にある世界最大級の種子保存機関「ミレニアムシードバンク」による種子保存の取り組みなどについて視察することに触れられ、「バンクには、東日本大震災の津波被害により高田松原で数万本のマツが倒れる中で唯一残った『奇跡の一本松』と同じアイアカマツなどの種子が岩手県から寄贈されたと伺っており、強じん性や震災からの復興、そして日英友好の象徴として永く保存されることでしょう」と述べられた。
 天皇皇后両陛下は昨年6月、陸前高田市で開催された全国植樹祭に出席され、式典の中で一本松の正統な後継樹を含む苗木6本を植えられた。日英の友好関係を全世界に発信する国際親善行事で、市の復興のシンボルである一本松に関するご発言があり、市民らが喜んでいる。
 震災後、高田松原の再生活動に尽力してきた鈴木さんは「まさかという思いで、言葉にならない。本当にありがたいことだ」と声を弾ませる。
 約7万本あったとされる松林、白砂青松の景色を取り戻すため活動を繰り広げてきた功績が認められ、4年度緑化功労者として農林水産大臣賞を受賞した鈴木さん。昨年の全国植樹祭で表彰を受け、その前日、高田町のキャピタルホテル1000を訪れた両陛下からねぎらいの言葉をかけられたという。
 「『頑張っていますね』と直接お言葉をかけていただき、生涯忘れることはない」と振り返る。「今の高田松原のマツは全国のボランティア、企業・団体の協力があって植えられたもの。改めて皆さんへの感謝も忘れずにいたいし、奇跡の一本松のように、たくましく育ってほしい」と願いを込めた。
 佐々木市長は全国植樹祭前日、高田松原津波復興祈念公園で両陛下を出迎え、園内を案内。一本松にも立ち寄り、市長は一本松や当時の復興事業の象徴であり、現在は橋跡だけが残る土砂運搬用のベルトコンベヤー「希望のかけ橋」などについて説明した。
 市長は「天皇陛下が晩餐会で一本松や高田松原のことに触れながら、震災からの復興、再生への思いを語られ、胸がいっぱい。両陛下は当市のみならず、災害で被災した日本中の人にいつも寄り添ってくださる。この感謝の気持ちを心に刻む」と語った。