10月から34%引き上げ方針 し尿収集運搬手数料 気仙広域連合 運搬量減少と経費高騰受け

 大船渡、陸前高田、住田の3市町で構成する気仙広域連合は、し尿収集運搬手数料を34%引き上げる改定案をまとめた。50㍑までごとの利用者負担額は、現行の380円(処分料10円含む)から510円とし、1回の収集量が200㍑以下の場合、1520円から2040円とするもの。下水道普及に伴う運搬量減少と経費高騰を背景として、委託業務の赤字状態が続く現状を踏まえた対応。今後、同連合議会に改正条例案を上程し、10月1日からの改正を見据える。(佐藤 壮)

 

し尿処理業務などを担う気仙広域連合

 一般廃棄物であるし尿処理は、気仙3市町では気仙広域連合が共同処理を行っている。管内業者に運搬業務を委託し、受託業者が利用者から徴収する収集運搬手数料が委託料となっている。
 現行の50㍑までごとの料金は、気仙広域連合から業者への委託料となる収集運搬手数料が370円、気仙広域連合の歳入となる処分手数料が10円の計380円。1回の収集量が200㍑以下の場合は、1520円としている。
 令和5年度の実績によると、7500世帯から収集。近年は、下水道接続などを受けて、対象世帯、手数料収入とも減少が続いている。
 し尿処理の運搬業務を受託する業者からは、昨年と今年の2度にわたり、収集運搬手数料の増額に関する「陳情書」が出された。この中では「下水道区域拡大などによる水洗化率の上昇に伴うし尿処理運搬業務の減少と、物価高騰の情勢下で、委託業務の継続や安定的な実施ができない状況にあり、手数料の適正化に配慮を」としている。
 受託業者の平成28年度以降の単年度収支は赤字となっており、繰越利益剰余金からの補塡が続いている。し尿処理を担う県内19団体を見ると、収集運搬手数料の平均は443円となっている。
 改定料金案は、令和6~10年度に前年度比で6%収集運搬量が減少していくと見込み、その中で運搬業務収支が赤字とならないように算定。34%増となる510円を「適正な手数料」とした。
 現在、し尿処理に対する1世帯当たりの平均年間負担は2万2800円。改定後は7800円増の3万600円と試算する。気仙3市町における公共下水道使用料(汚水排出量15立方㍍)は、3万2340円~3万3792円となっている。
 気仙広域連合は平成10年に設立。手数料改定は過去4回実施している。このうち、同18年は気仙管内の料金を統一。同26年と令和元年は消費税増額分を反映した。
 令和3年度は、し尿処理量と諸経費の上昇などを受けて見直した。それでも、50㍑までごとの手数料は設立以降、300円台を維持。一方で、近年も収集運搬料が減少し、さらに燃料・資機材価格の高騰や人件費上昇などの影響を受け、費用が増加している。
 今回の改定割合は大きいものとなり、連合側も「住民側への十分な周知等が必要」とする。激変緩和措置は行わない方針。
 こうした改定案は、先月28日に開かれた気仙広域連合議会の全員協議会で説明された。議員からは「改定はやむを得ない」との発言があり、反対意見はなかった。
 広域連合では、来月にも開かれる同議会臨時会で改正条例案を提出する方針。広報誌やホームページなどで周知を進めるほか、し尿収集で訪問した各世帯にもチラシを配布する方針。10月1日からの条例施行を目指す。