5年ぶり開催に手応え いわて・大船渡港セミナーin東京 海上貨物取扱増に向け情報共有

▲ コロナ禍以降では初開催となったいわて・大船渡港セミナーin東京

 大船渡港物流強化促進協議会(会長・渕上清市長)による「いわて・大船渡港セミナー2024in東京」は4日、東京都中央区のTKPガーデンシティPREMIUM京橋で開かれた。新型コロナウイルスの影響で見送りが続き、5年ぶりの開催。大船渡港は昨年度、コンテナ貨物量が過去最高だった一方、輸出貨物の確保やバラ積みを含めた海上貨物全体の取り扱い増が求められている。協議会関係者は、新紙幣の肖像となった渋沢栄一と同港のつながりも織り交ぜながら積極的にPR。具体的な取引に関する懇談もあり、関係者は今後の展開に手応えを示した。(佐藤 壮)

 

新紙幣にちなみPRも

 

 同協議会では、既存貨物の増量や荷主の新規開拓による海上貨物量の拡大、客船誘致を目指している中、大船渡港の魅力PRや荷主、船社のニーズ把握、全国的な知名度向上などを目的にセミナーを企画。市と同港振興協会が共催した。
 令和元年以来の開催で、物流決定権を持つ首都圏の荷主企業や商社、運送事業者、船社などから約120人が参加。セミナーと情報交換会の2部構成で行われた。
 港湾管理者である県沿岸広域振興局の沖野智章副局長によるあいさつなどに続き、前半は渕上市長が港湾の概要や海上貨物の取り扱い状況、コンテナ事業などを説明。茶屋前(大船渡町)、野々田(同)、永浜・山口(赤崎町)の各岸壁機能に加え、海上貨物取扱量は県内の半数超を占める実績を強調。一方で、近年の減少傾向にも触れ、活用に理解を求めた。
 コンテナ事業では国際フィーダー定期航路や、静脈物流と言われる廃プラスチックを中心とした内航定期航路を挙げ、二酸化炭素排出量削減につながるモーダルシフトや首都圏の交通混雑回避、ドライバー不足問題の解消といった利点に言及。コンテナ貨物は令和5年度実績は過去最高となったものの、輸入超過による空コンテナ輸出が多い現状も指摘した。
 引き続き、同港の国際定期航路に関わるオーシャンネットワークエクスプレスジャパン㈱営業本部営業三部の伊藤盛康部長が「地方港における輸出入促進と大船渡港」と題して講演。日本最大の外航コンテナ運航会社として各地で展開している航路事業に加え、各種データに基づく大船渡港の可能性に言及した。
 同港からのコンテナ貨物輸出入は近年、アジアが大半を占めるといい、北米や欧州向けの伸びに期待を示した。また、東北地方で出るコンテナ貨物のうち、かなりの割合が京浜港から輸出されている現状も指摘。県内陸部からの貨物を大船渡港に仕向ける取り組みの重要性に加え、近年拡大している農林水産物・食品の輸出利用を伸びしろの一つとして挙げ、「地方港利用促進の可能性は高い」と締めた。
 引き続き行われた情報交換会では、立食形式で懇談。協議会関係者が、同港を利用する荷主企業や船社所属出席者に声をかけるだけでなく、首都圏の民間関係者同士で活用に向けた話題を交わす光景も見られた。
 会場では、5年前にはなかった工夫も見られた。セミナーの席には、3日に発行が始まった新紙幣1万円札の肖像となった渋沢栄一を模した菓子や、藍色の手提げ袋も用意。渋沢栄一は藍づくり農家で生まれ、商業に関心を持ったことでも知られる。
 渕上市長は、渋沢栄一が明治期に、天然の良港である大船渡を東北発展の要にしようと、日本海側へつながる鉄道整備を目指して尽力した足跡も紹介。そのうえでコンテナ利用に関しては「大船渡は新規に加え、毎年取り扱う荷主向けの利用奨励補助制度も充実している。大船渡から、渋沢栄一が描かれた新紙幣の動きが活発になるように」と訴えた。
 また、出席者には、大船渡高校出身でプロ野球・千葉ロッテマリーンズで活躍する佐々木朗希投手の紹介で脚光を浴びる市内製造の「酢の素」や、三陸鉄道車両をイメージした箱に入った「かもめの玉子」の土産も用意。情報交換では、市内製造の日本酒やワインも並べ、市や県の関係者は法被姿で名刺交換に臨み、懇親を深めた。
 大船渡国際港湾ターミナル協同組合の細川廣行理事長(東北汽船港運㈱社長)は「東京で、普段お世話になっている会社の方々と顔を合わせることが大事。出席者数はコロナ禍前よりやや少ないが、早速動き出しそうな案件もあり、前向きな懇親ができた」と語った。
 渕上市長も「情報交換会では『海産物を大船渡港から出したい』といった声や、ILC(国際リニアコライダー)関連の活用などが話題となり、まだまだ可能性があることを再認識した。大船渡港のコンテナ航路は、毎週安定して寄港しているのも強み。近隣自治体との連携も強化しながら、セミナーも継続して開催したい」と話していた。