何度も訪れたくなる中心街形成を 10~20年先見据えた指針策定 高田まちなか会 会員で共有しアクション展開へ
令和6年7月7日付 7面

陸前高田市高田町の事業者らでつくる高田まちなか会(小笠原修会長)は、今後10~20年の中心市街地におけるまちづくりの方向性を示す「高田まちなかビジョン2024」を策定した。東日本大震災で壊滅した市街地のインフラ復旧が完了した一方で、新型コロナウイルス禍、物価高騰で地域経済は疲弊し、三陸沿岸道路の全線開通に伴う「ストロー現象」も懸念される。人を呼び込む店づくりや持続可能な市街地形成に向けた新たな局面を迎える中、「高田らしさを生かした何度も訪れたくなるまち」という未来をたぐり寄せようと、同ビジョンを会員共通の指針にアクションを起こしていく。(高橋 信)

ビジョンを分かりやすく地図にした妄想マップ
同ビジョンは、まちなか会内のビジョン委員会(磐井正篤委員長)が中心となり策定。対象区域、目標・方針、具体の取り組み、将来像、ロードマップなどを盛り込む。
対象区域は、にぎわい創出の核である商業施設「アバッセたかた」を中心とした市街地約20㌶。おおむね10~20年の方向性を示し、状況に応じて適宜見直す。
目標像は「高田らしさを生かした何度も訪れたくなるまち~個店の持続的経営と誇れるまちなかの実現に向けて~」。方針は▽魅力的な個店が集うまち▽いつもなにかやっているまち▽つい歩きたくなるまち▽やさしいおもてなしのまち▽地元を生かすまち▽風通しのよいまち──の六つを掲げる。
具体の取り組み例は、まちなか会の5委員会や理事会などが手掛けている活動、イベントを6方針別に振り分け、一覧表にした。ロードマップによると、毎年取り組みの成果を確認し、令和10年度にそれまでの検証を行う。
一連の構想を網羅するように描き込んだ令和12(2030)年時点の地図「高田まちなか妄想マップ」も作成。会員や一般向けに配布する。
震災を経て商業施設や図書館、子ども広場、博物館などがコンパクトに整備された新市街地。昼時に行列をつくる人気飲食店が複数あり、休日の日中は比較的にぎわいをみせるものの、平日の人出はまばらだ。復興事業の長期化などで空き地が目立ち、不足業種も少なくない。まちなかを目的地化する仕掛けが求められていた。
こうした課題感とコロナ禍、物価高の長期化を踏まえ、まちなか会は平成30年のまちびらきと同会発足から5年が経過した昨年、ビジョン委を新設。県内外の視察を3度行ったうえ、会員間で「陸前高田らしいまち」としていくための意見を出し合い、ビジョンをまとめた。
会員は同ビジョンに基づき、具体の取り組みを展開していく。その一つがまちなか会にぎわい委(橋詰真司委員長)企画の路上市「ほんまる茜市」。来年の本格開催に向け、今年9月の毎週土曜日にアバッセたかた周辺で4回催し、運営上の課題などを探る。
磐井委員長は「震災後、事業者は先が見えない中で無我夢中で走ってきたが、一度立ち止まり、自分たちの立ち位置と今後の方向性を確かめ合う時期に来ていた。視察を経て自分たちのまちに自信も持てた。策定したビジョンをバイブルに、高田らしさを生かした誇れるまちにしていきたい」と力を込める。