対象住民・地域の特定へ 自動車による津波避難行動方針 年度内決定目指し対策会議が始動

▲ 津波避難の行動方針取りまとめに向けた対策会議が始動

 大船渡市による第1回津波避難対策会議は9日、盛町の市防災センターで開かれた。避難行動の迅速化などによる津波災害時の「犠牲者ゼロ」に向け、東日本大震災の経験や教訓も取り入れながら、行動方針決定を目指す。避難は原則徒歩とする一方、車両避難は必要とする地域住民に加え、幹線道路を横断せずに高台にたどり着ける地域などに限定する検討案が示された。市は年度内に今後2回程度会議を設けるほか、地域ごとの住民ワークショップも開催し、具体的な方針を取りまとめる。(佐藤 壮)


 委員は学識経験者や市内各種団体の関係者、市各部長ら17人で構成。この日は代理を含め全員が出席した。代表者に委嘱状を交付した渕上清市長は「避難はソフト対策の要。知恵を結集し、効果的な避難行動方針として取りまとめてほしい」と述べた。
 協議は非公開で行われた。市によると、委員長には県立大学防災復興支援センターの杉安和也副センター長、副委員長には市地区公民館連絡協議会の佐藤惟司会長を選んだ。
 地域防災を専門とする杉安委員長は終了後、報道陣の取材に対応。協議では、震災直後に自動車や徒歩で避難した人々の課題などで情報共有を図った。渋滞が発生し、停電で信号も稼働せず、車両を乗り捨てる対応にも苦慮したことなどが話題に上ったという。
 そのうえで「避難行動は、原則徒歩の大前提で進められているが、自動車でなければ避難できない人も一定数いるのは明白。自動車で避難をしなければいけない避難困難区域を定めるとか、津波が発生した時に自動車で避難しなければならない人に関する議論をした」と振り返った。
 沿岸の他自治体でも自動車も含め波避難の検討が進められているが、大船渡市ならではの課題に関しては「比較的、(高台など)垂直避難が可能な環境が整っているが山に囲まれている地形で、地震や水害で土砂災害の併発も考えられる。自動車避難の場合、経路設定が限定されるというのが、課題ではないか。新しく道路を造るのは難しい中、どういった可能性があるかを議論したい」と述べた。
 県は令和4年3月、最大クラスの津波浸水想定を発表。同年9月公表の「岩手県地震・津波被害想定調査報告書」では、市内で最大400人の犠牲者が出るとされたが、避難行動の迅速化等を図ることで、犠牲者ゼロが可能としている。警報時、市内の避難対象住民は人口の約2割に当たる6200人余となっている。
 この日の会議資料によると、市は想定される第一波到達予想時間などに基づき、地震発生5分後までに避難を開始した徒歩避難可能距離は500㍍程度と想定。そのうえで「災害時に自力避難が難しい人」を整理する。
 また、事務局は自動車による避難対象者と、自動車避難可能地域に関する検討案を示した。対象者は、徒歩避難ができない人といった「自動車を使わざるを得ない住民」と、避難支援者とする。
 可能地域に関しては▽幹線道路(国道、県道)と平面交差(横断)せずに、津波浸水想定区域外に避難できる道路が確保されている地域。ただし、幹線道路の交通量が少なく容易に横断できる地域は除く。▽徒歩避難者の避難を妨げない幅員以上の道路がある地域▽地域内で避難車両の駐車場スペースが確保できる──を条件として挙げる。
 今後はさらに具体的な自動車避難のあり方を検討するほか、事業従事者や観光客をはじめ地理が詳しくない層の対策も探る。次回の検討会議は10月に予定。9月下旬〜10月にかけては、地域ワークショップも開催する。来年2月の第3回会議で方針案議論・方針決定を見込む。
 委員次の通り。
 杉安和也(県立大学防災復興支援センター副センター長)鷹木譲(国土交通省東北地方整備局南三陸沿岸国道事務所大船渡維持出張所長)櫻井秀明(県大船渡土木センター道路整備課長)菅原俊(大船渡警察署地域課長)佐藤惟司(市地区公民館連絡協議会長)伊藤淳子(大船渡商工会議所企画総務部課長)
 大和田恵美(市観光物産協会係長)山﨑高範(市社会福祉協議会生活福祉課長)新沼真弓(防災士)佐藤礼(大船渡消防署長)松川伸一(市総務部防災管理室長)安居清隆(市市民生活部長)佐々木義和(市保健福祉部長)冨澤武弥(市商工港湾部長)山田宏基(市農林水産部長)金野尚一(市都市整備部長)伊藤真紀子(市教育委員会教育次長)