気仙の復興、地域づくりへ 知事が若者らと意見交換 陸前高田で管内状況調査や懇談行う(別写真あり)

▲ 管内状況調査では達増知事(右端)が高田高校生らと意見交換

 県による管内状況調査と県政懇談会は10日、陸前高田市内で開かれた。達増拓也知事が気仙の高校生や各分野で活躍する若者らと意見を交わし、それぞれの活動や若い世代から見た地域の現状、課題を把握。東日本大震災からきょう11日で13年4カ月を迎える中、よりよい復興や今後の地域づくりに向けた方策などを探った。達増知事は同日、住田町内で状況調査を行い、大船渡市内では3市町からの対県要望に臨む。(三浦佳恵)

 

きょう震災13年4カ月

 

気仙の若者4人と懇談した「いわて幸せ作戦会議」

 知事による管内状況調査は、各広域振興局圏域の特性を踏まえた地域づくりを進めるために実情や課題を把握しようと、本年度新たに取り組んでいるもの。
 気仙での調査は10、11の両日に設定され、達増知事や県の幹部職員らが出席して意見交換と現地視察を計画。初日の意見交換には昨年度、陸前高田市の派遣交流事業でシンガポールを訪れた県立高田高校3年生の村上佳厘奈さん、吉田智咲さん、中野和子さん、山本梨乃さんの4人が臨んだ。
 4人は、震災後の復興支援から生まれたシンガポールとの交流、現地での体験や探究学習の成果などを発表。「日本とは異なる多民族国家・シンガポールの多様性、観光立国としての先進的な社会を肌で感じられた」「互いの宗教や容姿、生活習慣といった違いを認め合うことや、国際共通語を通じた交流のために必要な主体性の重要性を学んだ」などと、異国での経験を振り返った。
 達増知事は、生徒らと主体性の大切さなどについて意見を交換。最後に「私もこれまで国際交流を続けてきて、本当に良かったと思っている。多くの人たちに国際的な活動や仕事を薦めたい。応援している」と、生徒たちを激励した。
 中野さんは「派遣事業は得るものがどれも新しく、楽しかった。また、震災のことを風化させないよう伝えていくのはもちろん、高田のいいところも知ってもらいたいと思うようになった」と話していた。
 知事らはこのあと、横田町の㈱長谷川建設本社社屋を視察。気仙杉を活用したコミュニティー再生の取り組みなどに理解を深めた。
 この日は管内状況調査に先立ち、同ホールで県政懇談会「いわて幸せ作戦会議in陸前高田」も開かれた。陸前高田市観光物産協会事務局員の多勢太一さん(27)、大船渡市のナチュラボコクーン代表・佐藤真優子さん(44)、カーライフサポートGEAR代表で大船渡青年会議所理事長の鎌田俊さん(39)、住田町教育委員会教育コーディネーターの佐藤範子さん(38)が出席し、達増知事らと懇談した。
 今回は復興の視点から、テーマを「若者・女性が活躍できる地域を目指して~夢を形に 希望あふれる気仙の創造~」として意見を交換。気仙3市町で観光や地域活動の推進、資源の活用などに取り組む出席者らは、自身の活動や思いなどを語った。
 多勢さんは、みちのく潮風トレイルに関する取り組みとして、魅力の発信、地元の小学校や企業との連携などを紹介。「トレイルを観光商品につなげるためにも、ガイドの育成が必要」と提言した。
 佐藤(真)さんは、廃棄処分されるアワビやホタテの稚貝などでアクセサリーを制作し、販売。漁業者の苦労や海洋環境の変化にも触れ、「一人でも多くの人が三陸に足を運び、海に関心を持ってほしい」と述べた。
 車販売店を営む鎌田さんは、地元・盛商店街の現状と、空き店舗活用に向けた課題などを説明。「空き店舗の活用で交流人口や、若者・女性の活躍の場を増やしていきたい。そのために県も協力を」と求めた。
 佐藤(範)さんは県立住田高校の魅力化事業や、住田町内で予定する子ども食堂の取り組みを示した。そのうえで、「外国人、子育てや高齢者世帯が心のよりどころを持って、心を一つにできれば」と力を込めた。
 それぞれの取り組みは、震災からの復興をはじめ、人口減少や少子化への対応、インバウンド、SDGsなどに波及しており、達増知事はコメントを寄せながら4人の活動、地域課題を理解。懇談を終え、「皆さんは、それぞれの分野で最前線を切り開く形で活動しており、頼もしく感じ、参考になった。県の担当にも伝え、改めてしっかり取り組みたい」と所感を述べた。
 達増知事は11日、午前中に管内状況調査として住田町の吉田樹苗と滝観洞観光センターを視察。午後は大船渡市の大船渡地区合同庁舎で気仙3市町からの要望活動に対応する。