復興の地に〝再会〟の音 5年ぶりKRF開催 総勢12組出演、市街地に活気(別写真あり)

▲ 県内外から訪れたファンが復興の地で鳴り響く音楽に熱狂した

 「ケセンロックフェスティバル」(KRF、同実行委主催)は15日、大船渡市大船渡町の夢海公園で開催された。新型コロナウイルス禍での中断もあり、5年ぶりとなった今回は、東日本大震災後に整備された中心市街地で初めて開催。12組の出演アーティストや実行委、県内外からのKRFファンたちが〝再会〟を果たし、一体となってイベントを盛り上げ、復興の地に鳴り響く音楽に熱狂した。(清水辰彦)

 

 KRFは、国内外で活躍する著名なアーティストらが集う音楽の祭典。平成20年に大船渡市で開いた「OFUNATO ROCK FESTIVAL」を前身とし、翌21年に住田町や奥州市にまたがる種山ヶ原で初開催した。
 東日本大震災が発生した23年は断念したものの、24年に復活後は毎年実施。実行委を構成する気仙の住民が中心となって地道に準備を進め、気仙の復興を後押ししようと、人気アーティストが集結するロックフェスとして定着した。
 令和元年に10回目を迎え、令和2年は準備期間を設けるために開催を見送り。3年からは気仙3市町での持ち回り開催も視野に再開を予定していたが、コロナ禍に見舞われたために同年から5年まで見送りを余儀なくされた。
 気仙両市では東日本大震災の復興事業が進み、ハード整備は完了。新たな市街地が形成されたことから、〝原点〟である大船渡で開催した。
 KRFの開催を心待ちにしていた全国のファンたちは、再開を喜びながら続々と会場入り。実行委によると約3700人が来場した。チケットは完売し、ステージのある有料スペースの外側に設けられた無料のサンシェードエリアもたちまち満席となった。
 イベントはDJ鹿野によるステージで幕開けし、大船渡市在住のLAWBLOW、同市出身者らによる3人組ロックバンド・FUNNY THINKがステージに上がり、会場を盛り上げた。
 その後も、the band apart、HAWAIIAN6、IN-pish、FRONTIER BACKYARD、ASPARAGUS、Tokyo Tanaka(MAN WITH A MISSION)、locofrank、MONOEYES、10─FEETが次々と登場した。アーティストはそれぞれ、KRF再開の喜びや被災地への思いを発信。聴衆もステージから届く思いを受け取りながら、鳴り響く音楽に酔いしれた。
 有料エリアの外側は誰でも来場できるエリアとなり、飲食店なども充実。公園での開催とあって遊具で遊ぶ子どもたちの姿もあり、家族連れもゆったりとした雰囲気で楽しんだ。
 軽米町から訪れた蛇口貴浩さん(32)は平成27年からKRFに来場し続けているといい、「開催してくれてありがたい。復興した場所でフェスが開かれるというのも感慨深い」と、青森県から参加した竹之下菜美さん(25)は「KRFは初めてだが、すごく楽しげな雰囲気でいいなと感じた。大船渡も、あの震災からここまで復興したことはすごいと思う」と話していた。
 出演者のうち、FUNNY THINKのギターボーカル・金野一晟さん(26)とドラム、コーラス・森亨一さん(26)はともに大船渡町出身。KRFは初出演で、生まれ故郷での演奏を終え、金野さんは「ライブハウスとは違って空が高くて、音が遠くまで飛んでいる感覚があった。5年ぶりのKRFが地元・大船渡で開催され、それに出ることができてうれしく思う」と、森さんは「(KRFは)目標としていたものでもあるがゴールではなく、成長した姿を見せられればいいなと思っていた。お客さんの顔を見てみると、同級生や仲間、元メンバーがいて泣きそうだったが、とにかく楽しかった」と話していた。
 初の中心市街地での開催だったが大きなトラブルはなく、千葉裕昭実行委員長(54)は「アーティスト、お客さんの笑顔がうれしかった。実行委が積み上げてきたものが完成し、ぐっとくるものがある。今回の課題をしっかりと調べ上げたうえで、次に向かいたい」と語り、達成感ある表情を浮かべていた。