「機能強化」前進なるか 新たな特別委員会設置巡り議論 市議会 人口減や議員なり手不足など現状踏まえ
令和6年7月20日付 1面

大船渡市議会全員協議会は19日、市役所議員控室で開かれ、議会機能向上に向けた新たな特別委員会設置に関する説明が行われた。近年は人口減少や持続可能なまちづくりへの対応に迫られるほか、4月の市議選では市制施行後初の無投票に終わり、議員のなり手不足が顕在化した。政策サイクルや議員定数、広報・広聴の各検討を進める方向性が示された中、各議員はスケジュールや審議時の視点などで意見を交わした。(佐藤 壮)
この日は当局側の出席はなく、伊藤力也議長を前に全19議員が並んだ。伊藤議長が「市議会が歩む議会改革に関する調査・検討の必要性」に関する説明を行った。
これまでの機能向上への取り組みとして、議会基本条例の制定に加え、東日本大震災の復興計画に対しては復興対策特別委員会のPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルによる提言活動に言及。常任委員会の取り組みに受け継がれ、市民課題を調査し、議員間討議を経て当局への政策提言に結びつけている現状にも触れた。
一方、人口減少や持続可能なまちづくりに加え、「社会の多様性」への対応も強調。「無投票に対応する今後の定数と報酬の検討は、『議員のなり手不足』に対し、女性と若者の参加しやすい環境をつくること。また、タブレット端末を生かした介護、子育てに対応する本会議や常任委員会のオンライン化の検討も必要。女性と若者、生活者目線と立候補環境に、可能性の枠を広げることになると考える」と述べた。
多様化が進む社会問題・地域課題への対応に向け、さまざまな組織や団体と連携を強化する重要性も指摘。具体的な審議事項には▽議会から地方自治に対する監視と政策提言を強化し、その役割を果たす予算と連動する政策サイクル▽議会が率先して議員なり手不足と立候補環境に対応していくための定数等の検討▽情報発信のさらなる充実や、わかりやすく市民の信頼を得られる議会運営など広報・広聴の取り組み──を挙げた。
検討組織として「市民と歩む議会機能向上特別委員会」を立ち上げる流れも説明。副議長以下全議員で構成し、政策サイクル、定数等、候補・広聴の各分野を検討する部会も設ける。
政策サイクルでは、提言や政策立案に加え、議員発議の体系化をまとめる方針。定数等に関しては、議会機能や常任委員会の提言活動などから、定数や報酬、政務調査費のあり方などを探る。広聴・広報部会では議会報告会やSNSの発信、デジタル化の推進などの方向性をまとめる。
議員からは、復興計画を議会の議決案件とした足跡など、これまでの取り組みを踏まえて機能強化を進める発言が出た。改選1年目である状況を踏まえ「今、議会に何が足りないかといった議員間の認識の共有が重要」「勉強会・研修会も開催していくべき」として、説明資料に記された1年程度の設置期間よりも長くするよう求める意見も寄せられた。
また、監視機能の充実として、これまで議会開会中の2日間で開催している予算、決算の各特別委員会について、各常任委員会の審議も盛り込むといった方策も話題に。定数に関しては、議員の活動量にとどまらず、市全体の人口減少傾向も考慮した検討を求める要望もあった。
特別委員会設置そのものに対する異論はなかったが、今後、会派代表者会議を開くなどしてさらに調整を重ねる。
現市議は、5月9日から4年間の新任期に入った。4月の市議選は現職16人、新人4人の候補にとどまり、昭和27年の市制施行以来、初めて定数を上回らず無投票で幕を閉じ、市民の議会への関心低下が懸念されている。
前任期では、議員定数等検討委員会が議員定数・議員報酬・議員の政務活動費について「さらなる検討を次の議会につなぐ」とし、特別委員会での審議を求める内容をまとめた。調査では立候補しやすい環境づくりや、議会のデジタル化推進による効率性向上の重要性も浮き彫りになった。
近年は、新型コロナウイルスや物価高騰などの影響が深刻化し、地域事情や住民生活に根ざした取り組みの重要性が増す。また、人口減少などに伴い、予算規模は縮小を続け、積極的な施策展開だけでなく既存事業の見直しも求められる中、議会の主体的な改革姿勢の行方が注目される。