「日常利用」課題浮き彫り 一関市でJR大船渡線首長会議 数値など目標設定に至らず

▲ 1月以来2度目の開催となったJR大船渡線沿線自治体首長会議

 第2回JR大船渡線沿線自治体首長会議は22日、一関市役所で開かれた。同市や宮城県気仙沼市の両首長に加え、気仙両市の副市長が出席。利用促進の取り組み目標に関する議論では、数値も交えて掲げることなどに慎重な意見が出た中、設定は見送りとなった。市長、副市長はそろって日常利用の難しさを口にし、住民乗車の底上げや観光需要の継続的な取り込みなどの課題が浮き彫りに。一方で本年度も、沿線市などが掲げる利活用策をそれぞれ推進する方針も確認した。(佐藤 壮)

 

 この会議は、利活用策やJR東日本との協議調整などを目的に設置され、今年1月以来の開催。佐藤善仁一関市長、菅原茂気仙沼市長に加え、引屋敷努大船渡市副市長、石渡史浩陸前高田市同が出席。沿線各市や両県の関係者らも並んだ。
 冒頭、座長を務める佐藤一関市長は会議設置に至った経緯や、第1回の協議事項を振り返りながら「コロナ禍前に近い動きになっていく中で、将来について考えたい」とあいさつした。
 他路線の状況などに関する情報提供、JR東日本による大船渡線の現状説明、6年度の利用促進策などに関する報告、取り組み目標設定に関しては全て、非公開で進められた。予定よりも30分以上長い約2時間を要し、市長、副市長がそろって取材に応じた。
 佐藤市長や事務局の説明によると、目標設定に関しては事務局から具体的な数値も含めた案が出た一方、各市などが進める利活用策との整合性などを巡って意見を交わし、結論が出なかった。この日は、駅前でのイベント開催や沿線を巡る企画など、各市や各種団体が本年度進める利活用策も示され、それぞれ進める方針も確認した。
 次回の会議日程は未定。取り組み目標を設定するかどうかも流動的な状況といい、今後のあり方に関しては事務方で調整を進める。
 佐藤市長は「日常利用が、いちばん難しいところ」と語り、他の市長、副市長も同調。菅原気仙沼市長は「どう増やすかは、非常に大きな課題。これが今回、目標設定ができなかったり、そのうえでどうしたらいいかの根底にあると思った」と述べた。
 石渡陸前高田市副市長は「コロナ禍前には回復しておらず、どうやって増やしていくかが課題。本年度の取り組み案が、日常利用に結びついていくかも、もう少し考えないといけない」、引屋敷大船渡市副市長は「日常利用はまだまだ課題が多い。市ごとに事情の違いもある。時間をかけ、沿線市が一体となって取り組むべき」とそれぞれ話した。
 JR東日本は、「持続可能な交通体系について建設的な議論をさせていただくため」として、利用の少ない34路線62区間の令和4年度収支状況を、ホームページなどで公表。路線別の利用状況も示している。
 大船渡線の鉄道区間(一ノ関─気仙沼、62・0㌔)は、運輸収入が1億1800万円だったのに対し、営業費用は15億4500万円で、差し引き14億2700万円の赤字に。100円の運輸収入を稼ぐためにかかった費用を示す営業係数は1308円で、収支率は7・6%と、厳しい状況が浮き彫りになり、路線維持に向けた活動強化の機運が高まっている。
 また、5年度における大船渡線(一ノ関─気仙沼)の1日1㌔当たりの平均通過人員は588人。令和3年度から3年連続で増加しているが、コロナ禍前に当たる令和元年度の754人には届かず、民営化した昭和62年度の1547人よりも大幅に減少している。
 同線BRT(気仙沼─盛)における5年度の平均通過人員は207人。前年度から24人(13%)伸びたが、元年度比では67人(24%)少ない。