本年度末でグローバルキャンパス閉所へ 市、岩手大、立教大の連携推進協が方針確認

▲ 本年度末で閉所することとなる陸前高田グローバルキャンパス

 陸前高田市と岩手大学(盛岡市、小川智学長)、立教大学(東京都豊島区、西原廉太総長)でつくる連携推進協議会は23日、市役所で開かれた。両大学が旧高田東中校舎を活用して共同運営してきた陸前高田グローバルキャンパスについて本年度末で閉所する方針を確認し、8月に両大学の合同授業を新たに実施することが決まった。東日本大震災後、3者が手を携えて展開してきた官学連携のあり方は、復興の進ちょくに伴い、学生や市民らのための活動拠点開設・管理という「ハード分野」から、市をフィールドとした教育プログラム実践など「ソフト分野」の取り組みへとステージ移行する。(高橋 信)

 

8月に両大合同授業実施で新展開

 

本年度の運営方針などを協議した連携推進協議会

 この日の会合には、佐々木拓市長、小川学長、西原総長、松岡洋子岩手大副学長、松山真立教大陸前高田サテライト長の委員全員が出席。陸前高田グローバルキャンパスの令和5年度運営状況や6年度の基本方針など4議案を承認、決定した。
 3者は平成28年1月、「地域創生・人材育成等の推進に関する相互協力及び連携協定」を締結。グローバルキャンパスは市民と外部の人々が接点を持ち、双方が互いに学び合えるような交流活動拠点などとして、29年4月に開所した。
 本県唯一の国立大、東京の有名私立大、自治体による3者協働という異例の取り組みとしても注目を集め、平成30年度の利用者数は5687人に上った。しかし新型コロナウイルス禍に襲われた令和2年度は673人と、前年度の15・6%に激減。3年度以降、利用者数は年を追うごとに回復し、5年度は前年度比918人(63・5%)増の2362人だった。
 一方で、被災した公共施設の再建に伴い、施設の利用ニーズの分散が進行。3者は施設の維持管理などの関連経費として年間150~300万円ずつを捻出しており、経済的な負担もあった。
 こうした状況を踏まえ、3者はこの間、同キャンパスの運営のあり方を協議し、本年度末で区切りをつけることとした。ただ両大がこれまで市内で実施してきた取り組みは基本的に継続し、新たな展開として合同授業も始まる。
 合同授業の実施日は8月下旬の4日間で、両大それぞれ10人ずつ計20人の学生が参加予定。市社会福祉協議会協力のもと地域に関する聞き取り調査を行うこととしている。
 小川学長は「市内における本学の各種活動は、継続を前提に検討を進めており、グローバルキャンパスに一定の区切りをつけても、これまでと遜色ない形で協力していく。今回の変化を前向きな発展と捉えていこう」と呼びかけた。
 西原総長も同調し、「場所としてのグローバルキャンパスは閉じることとなるが、学生たちによるプログラムをより強化・発展させたい。決して後ろ向きな動きではないことを3者で共有していく」と述べた。
 佐々木市長はこれまでの両大学の継続的な取り組みに感謝し、「行政では手の回らない地域課題に関して、学生らが地域とともに取り組んでいただき、大変感謝している。両大学の市内における今後の取り組みを、できる限りの支援をしていきたい」と話した。